「ツイセキ」のコーナー、今回は、入館者数が増加している原爆資料館の新しい動きです。
被爆80年、被爆体験の継承が課題となる中、広島市は「平和を担う人材の育成」を目指し、子供向けの新たな展示を検討中ですが、その内容が分かりました。

【野川 諭生 アナウンサー】
「原爆資料館です。平日の日中ですが、きょうもたくさんの人がこの資料館に訪れています。ただこうした状況の中で、修学旅行で訪れた子供たちがなかなかゆっくり展示に集中して見られないという課題も出てきているんです」

【野川アナ】
「そこで階段をおりて地下にやってきました。こちらには私の後ろにある会議室など3つの大きな部屋があります。広さはおよそ500平方メートルの展示になる予定です」

その展示の中身とは?
対象者は、小学校高学年から中学生で、当時被爆した同世代の子供たちの過去を追体験できる内容にします。

具体的には、被爆前の穏やかな日常から戦争が影を落としていく様子、町が壊滅し膨大な数の子供が犠牲になった実相、そして、被爆後心身の不安を抱えながら、それを乗り越え平和を求めていく「ヒロシマの心」を伝えるものとなっています。

【平和文化センター 谷 史郎 副理事長】
「全国の子供たちに平和を学習してほしいと我々思っていまして、自分たちの世代として平和を築いていくんだという気持ちをぜひ帰ってもらいたいんですね」

今回の展示を検討するにあたり、広島市は、被爆者や大学教授などを招いた検討会を開き、意見に耳を傾けてきました。
また、小中高校生協力のもと、子供の心理に与える影響も調査してきました。

【石井 百恵 記者】
「現在、中で行われている調査のもとになっているアンケート調査用紙なんですが、展示を思い出して悲しくなるなどの質問に4択で答える内容になっています」

調査は、原爆資料館の開館以来、初めて行われるもので、遺品や被爆者が書いた原爆の絵や当時の写真など、展示を見た後の影響について、アンケートと専門家の聞き取りを通じてトラウマがないかなどを調べました」

【広島大学教育学部心理学 上手 由香 准教授】
「今までも子供にとって刺激が強いのではないかとか、むしろ刺激が強いものをみせる必要があるんじゃないかという両方の意見があって、どちらが正しいと言い切れないというところがあるし、人によって影響が子供と大人でも違うし、同じ子供でも影響を受けやすい子とそうでない子もいる1つの答えはないと思う。実証的に言えれば判断基準を作る参考になれるのかと思うし、考える材料になるのかなと思います」

調査の結果を生かし、あまりに強い恐怖心は、その後の平和学習への抵抗感にもつながる恐れがあるとして、新展示では、照明や壁の色を現在の暗いものとは異なり明るさを十分に確保するなど配慮するとしています。

また、一部見学を選択したり、事前に展示内容がわかるよう工夫することを検討しています。

原爆資料館は、昨年度、入館者が2年連続で過去最多を更新しましたが、今年度上半期は、更に上回るペースで推移していて、深刻な混雑により、修学旅行生が平和学習をしたくてもゆっくり見られない状態が続いています。

【東京から来た修学旅行生】
「すごい学びになったんですけど全体的に時間がなかったです。展示は見られたんですけど、横の説明とかが全然見られなくて…」
「あんまり足りなかったです。忙しかったです」

こうした中、広島市は、混雑の緩和対策と同時に、この新たな平和学習展示を通して、「平和を考え、平和に向かって行動できる人材の育成」を目指します。

【スタジオ/野川アナ】

2028年度の完成を予定していますが、その他の特徴まとめています。

●佐々木禎子さんの折り鶴を含め「ほとんどの展示を実物資料」で展示する。
●「焼け焦げた弁当」など収蔵している実物のほかに、レプリカを用意し「触れる資料」として、学習効果を高める。
●また事前の心理調査で写真や絵画によっては児童生徒に眠れなくなるなど影響があったものもありました。そのため一部「見学するかどうか選択できる形」で展示するなどの工夫も行うとしています。

混雑対策はもちろんですが、方針として、被爆者が高齢化する中、「自分たちの世代の責務として、平和を追求する意識をもってもらいたい」という思いがあり、「全国の若い世代の平和学習の拠点」を目指していくという背景があります。

若い世代に自分事として向き合ってもらう新たな試みとなりそうですが…この新展示案は、29日、被爆者や専門家らによる会議で検討される予定です。

以上「ツイセキ」でした。

テレビ新広島
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