27日の東京株式市場・日経平均株価の終値が史上初めて5万円の大台を突破しました。アメリカと中国の貿易をめぐる対立が薄らいだことや、高市政権への期待感が株価を押し上げているとされています。その一方で、県民の暮らしは苦しくなっているとの声が上がっています。「実感なき株高」について県内を取材しました。
◆「全然実感なし」生活には縁遠い株高
武田祐季アナウンサー:
「きのう日経平均株価の終値が史上初めて5万円を突破しました。県民の生活に変化はあるのでしょうか」
県民は―
「生活はまだそこまで実感はない。家族は株価が上がってくれて嬉しいと話していた」
「給料はあまり変わらずに物価だけ上がっているので厳しい」
「(実際の暮らしには)全然関係ない。物価が上がって…なるべく食べないようにしている」
タクシ運転手は-
「全然実感なし。生活には全然。どこが変わるのかな?」
福井駅前で果物やケーキの販売店「フルーツのウメダ」を経営する梅田敬男さんも「株高の恩恵はない」と語ります。「生活実感として店の前の客数なり、お客さんの買い方なりを見ていると、株価が4月以降からずっと上がっている感覚とはちょっとかい離がある」
◆中小企業は賃上げに結び付かず
県民生活とかけ離れた株価の上昇。では、県内のシンクタンクや専門家はどう捉えて
いるのでしょうか。
県内経済の調査や研究を行う福井銀行グループの福井キャピタル&コンサルティングの川端康治社長は、県内の経済との関係をこう指摘します。
「実体経済と合っていない。恩恵を受けるのは大企業など限定的。中小企業は心理的な期待感でマインドが上向くかもしれないが、設備投資や賃上げには結び付かない」
厚生労働省の発表によると、物価変動の影響を加味した8月の実質賃金は、前年の同月と比べて1.7%の減少で、8カ月連続のマイナスです。
今後の株価について川端社長は「株価は一旦調整が入るのではないか。実体とかけ離れているので、日銀の利上げや政権不安など悪い材料が何か出れば一気に3000円くらい下がる可能性がある」と話します。
◆「国内経済は成長していない」専門家
県内経済に詳しい仁愛大学の南保勝特任教授も現在の株価について「国内企業の業績を反映した値とは言えない」と指摘。その上で「賃上げが難しく物価高で生活が苦しいのは国内経済が成長していないからだ」とします。
「バブル期はGDP成長率が5~6%、今の日本はそんなに成長していない。成長していないということは、私たちにフィードバックがないという、それが一番の原因」(南保教授)
物価の変動を表す消費者物価指数は、前年の同月と比べて2.9%上昇しています。では、実体の伴う成長には何が必要なのでしょうか。
「1つは生産性、イノベーションが上がること。2つ目は労働人口の増加。3つ目は投資活動の活発化」この循環が生まれてこそ実体経済の豊かさを実感できると南保教授は語ります。
専門家も指摘する県民の生活や実体経済とのかい離。私たちが恩恵を受ける日は果たしてやってくるのでしょうか。