安倍晋三元総理大臣を手製のパイプ銃で撃ち、殺害した罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判が始まりました。
山上被告は「全て事実です。間違いありません」と述べ、殺人罪について起訴内容を認めました。
一方検察側は冒頭陳述で「不遇ともいえる生い立ちに関し、被害者は何ら関係なく、旧統一教会に対する注目を集め、批判を高めるためだけに殺害を企てた。計画性、危険性の高さは目を見張るものがある」などと指摘しました。
■検察側「思い描いていた人生を送れないことから旧統一教会に恨み募らせた」指摘
検察側は冒頭陳述でまず、「山上被告の母が旧統一教会に多額の献金を行っていた」と旧統一教会との関係について述べました。
そして山上被告が大学進学を断念し、自衛隊に入隊したが自殺を図って退職。通信制大学に進んだものの中退したという経歴を示し、「職を転々とし、思い描いていた人生を送れないことから旧統一教会に恨みを募らせていった」などと指摘しました。
またおじの弁護士の働きなどもあり、旧統一教会が5000万円を分割して返金することになり、「山上被告も毎月10万円を受け取っていた」とも指摘しました。
■「安倍元総理を襲撃することで統一教会が社会の注目を浴び批判が高まると考えた」
そして事件に至る経緯として、「恨みを募らせて、旧統一教会の来日中の幹部を殺害しようと思い、火炎瓶を投げて殺害しようとしたが失敗。銃が必要だと考えるようになり、入手を試みたが失敗。パイプ銃を自作しようと考えた」と説明しました。
さらに安倍元総理を狙った経緯については、「被害者がビデオメッセージを旧統一教会に寄せたことをインターネットで知り、襲撃することで、旧統一教会の活動実態が社会の注目を浴び、批判が高まると考え、殺意をもって銃撃することを考えた」と指摘しました。
■「生い立ち自体は大きく量刑(刑の重さ)を軽くするものではない」
そして被告の境遇などについては次のように指摘しました。
【検察側冒頭陳述より】「母親が旧統一教会に入っていたことで、旧統一教会への恨みが動機になったというが、不遇な生い立ちでも生活している人もいる。
本人のプライドの高さ、対人関係、人生への失望感など、生きづらさを統一教会に向けた。
少年ではなく社会人なので法律の規範意識を持っている。生い立ち自体は大きく量刑(刑の重さ)を軽くするものではない」
■「聴衆が多くいる中で発砲 危険性の高さは目を見張るものがある」
【検察側冒頭陳述より】「現場には議員など聴衆が多くいる中、発砲して殺害し、聴衆に被害を与える危険があった。
元総理大臣の安倍氏を白昼堂々、殺害したことは戦後史上例をみない極めて重大な事件。
生い立ちは関係なく、旧統一教会への注目を集めるため犯行に及んだ。計画性・危険性の高さは目を見張るものがある」
■弁護側「『宗教被害』が事件につながった」母親や宗教学者を証人で呼ぶ方針
山上被告は2022年、奈良市で選挙の応援演説をしていた安倍晋三元総理を自作のパイプ銃で撃ち、殺害した罪などに問われています。
山上被告は逮捕後の調べに対し、安倍元総理が旧統一教会の関連団体に送ったビデオメッセージを見て、「教団とつながりがあると思った」と供述し、事件を決意するきっかけとなったとみられていました。
裁判は予備日を含めて19回が予定されていて、弁護側は、旧統一教会による「宗教被害」が事件につながったと主張し、山上被告の母親や宗教学者を証人として呼ぶ方針を明かしています。