うつ病で休職
女性は2021年11月ごろから、出勤前に涙が止まらなくなるなどの症状が現れた。
上司に相談し、営業所の所長も事情を聴いた。会社は男性に「厳重注意」を与えたが、女性の症状は改善せず、2021年12月には心療内科で「うつ病」「PTSD」「適応障害」と診断された。
その後、2022年4月から女性は休職し、2023年に会社と男性を相手取って損害賠償を求める裁判を起こした。会社とは2025年2月に和解が成立し、70万円の解決金が支払われた。
問題視された「ちゃん付け」
今回の裁判では、男性係長が女性を「ちゃん付け」で呼び続けていたことが問題視された。
 
判決は「ちゃん付け」について、一般的に子どもに対して使われる言葉であり、成人に対して使われるのは、交際相手等の親密な関係にある場合が多いと指摘。
さらに、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」でも、「○○ちゃん」と呼ばれることがセクハラの例として挙げられていることも指摘している。
裁判所は、こうした背景を踏まえ、「業務上においてこのような呼称を用いる必要性は見出し難い」「原告と被告の年齢や性別、本営業所に勤務する従業員同士にすぎないという両者の関係性に照らすと、原告に不快感を与えるものであった」と判断した。
つまり、「ちゃん付け」は単なる呼び方ではなく、職場での立場や関係性、言葉の使い方によっては、相手に不快感や心理的負荷を与える行為になり得るということを意味する。
さらに、電報の送付や、「かわいい」という発言、下着や体型に関する発言についても、「原告に不快感や羞恥心を与える不適切な行為であったといえる」と認定。一連の行為を、「社会通念上許容される限度を超えた違法なハラスメントとして、不法行為に当たる」と断じた。

 
         
        