仙台市青葉区・作並温泉の老舗旅館「鷹泉閣岩松旅館」の債務を引き継いだ「YI管財」が、10月14日付で仙台地方裁判所から特別清算開始命令を受けた。東京商工リサーチと帝国データバンクが27日、相次いで発表した。負債総額は2024年3月期時点で約9億円とみられる。
鷹泉閣岩松旅館は1796年(寛政8年)創業の歴史ある温泉旅館で、天然岩風呂をはじめとする源泉かけ流しの温泉と、最大250人を収容できる宴会場を備えていた。1952年に合資会社として法人化され、1985年には株式会社化。その後、バブル期の1992年3月期には売上高約26億円を計上した。
かつては102室・定員550人規模を誇ったが、近年はダウンサイジングを進め、51室体制に転換。客単価向上による経営再建を図っていた。
2011年の東日本大震災では宿泊キャンセルが相次ぎ、売上が急減。整理解雇を実施するなど対応を迫られた。2013年にはグループ化補助金を活用して建物の修繕を行い、総額1億8000万円のうち約75%を補助金で賄った。
2020年以降は新型コロナの影響を大きく受け、2020年3月期には売上高約7億円に対し、最終赤字約9500万円を計上。債務超過に陥っていた。2022年3月期には年収入高が約2億4700万円まで落ち込み、1億円を超える赤字を計上した。
2024年3月期は売上が約5億円まで回復したものの、近隣温泉地に比べて集客回復が遅れていた。2024年9月には大手リゾート運営会社「大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ」と業務提携。12月には会社分割を実施し、新設した「株式会社鷹泉閣岩松旅館」に事業を譲渡した。
その後、旧運営会社であるYI管財は、2025年2月1日に開催された株主総会で解散を決議。今回、債務整理を目的に特別清算へと移行した。
なお、帝国データバンクによると、YI管財の負債は2024年3月期末時点で約9億3100万円とされており、事業譲渡を経た影響で変動の可能性もあるという。