絶大とされる次男の統率力
こうしたアレフ内での体制の変化について、一連の事件の被害者や遺族への支援をする「オウム真理教犯罪被害者支援機構」副理事長の中村裕二弁護士は、「『やはりそうだったのか』という印象を受けた」と語る。

同機構では12年、アレフに対して、確定した賠償金の未払い分10億円強を支払うよう求める調停を申し立てた。
当初は和解の方向で協議が進んでいたが、突然、アレフ側が翻意したという。
「幹部信者の中には、真剣に遺族への被害弁済を考えていた人もいた。しかし、突然口をつぐんでしまったことから、教団内で何らかの強い意向が働いたのではと推察していた」と振り返る。
公安当局によると、その同時期に、次男が教団内で影響力を強め始めたとされる。
「松本元死刑囚は生前、息子らを後継者と指名していた。今もその意向に従う信者は多く、次男の統率力や求心力は絶大だと想像できる。もし次男が犯罪行為を指示すれば、従う信者も出かねない」と警鐘を鳴らす。
30年経っても終わらぬ事件
アレフは設立当初、その存在意義として「損害賠償の義務を果たす」ことを掲げていた。しかし現在は賠償を怠る一方で、資産は十数億円にのぼるとされている。
「被害者の多くは今も後遺症に苦しみ、生活が困窮している人も少なくない。蓄えられた資金が再びテロに使われないか、遺族は強い不安を抱いており、賠償を拒むことも決して許されない」。その上で、中村弁護士は訴える。
オウム真理教が地下鉄サリン事件や松本サリン事件を起こし、日本中を震撼させてから30年。
「30年が経っても、事件は終わっていないのです」

血縁によって継承された「グル」の地位。
被害者への償いを置き去りにしたまま、かつての権威が静かに再び形を取り戻そうとしている。
今あらためて、社会全体が風化を許さず、教団の実情を注視し続けていくことが求められている。(松岡紳顕)
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