任期満了に伴う宮城県知事選挙(10月26日投開票)は25日、選挙戦最終日を迎えた。現職で6期目を目指す村井嘉浩氏は、仙台市内で雨の中マイクを握り、「20年間、本当に一生懸命頑張ってきた。その努力を認めていただき、もう一度県政を前へ進めたい」と訴えた。

「正々堂々と政策で」誹謗中傷にも冷静対応

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演説の冒頭、村井氏は「雨の中でこれだけの方に集まっていただけたのは、次の4年への後押しの証」と感謝を述べた。
一方で「SNS上で誹謗中傷やデマのような攻撃を受けた」とも明かし、「同じようにやり返したらどうだという声もあったが、私は否定した。正々堂々と政策で判断を仰ぐのが正しい選挙の姿だ」と語った。

17日間で県内35市町村を回り、「漁業者や中小企業、山間地の住民など多くの県民の声を直接聞いた」と振り返った。
気仙沼や石巻では燃料費高騰や魚価低迷を訴える声に接し、「県が前に出て水産業の付加価値を高める仕組みをつくる必要がある」と述べた。

また、物価高に苦しむ県民や中小事業者の声を踏まえ、「再選したら高市総理に直接要望を伝える。11月議会で補正予算を組み、物価高対策を進める」とした。

「県民の声を聞く選挙」災害と改革の20年

村井氏は知事就任以来の20年を「災害と改革の連続だった」と振り返った。
岩手・宮城内陸地震、東日本大震災、台風やコロナ禍など、次々と難局が襲ったことを挙げ、「なぜ自分の任期中にこれほどの試練が来るのかと思ったが、ある人から『あなたの天命だ』と言われ、前向きに受け止めた」と語った。
その上で「ピンチをチャンスに変える“創造的復興”を掲げ、民間の力を最大限に生かした」と強調した。

仙台空港の民営化をはじめとする「民間活力の導入」を代表的成果に挙げ、「県の税金を使わずに100億円規模の空港リニューアルが進む。これが“政治の経営”だ」と述べた。

人口減少時代への備え 富県戦略の継続

村井氏は「富県宮城」という独自の産業政策を改めて訴えた。
「20年前に県の人口は230万人を少し下回っていた。今は223万人。7万人しか減っていないが、これからの20年で30万人減ると予測されている。だからこそ、第三次産業中心から製造業重視の構造に転換し、外からお金を呼び込む県に変えた」と説明した。
その成果として、県のGDPは「8兆4千億円から9兆5千億円へ拡大した」と述べ、「これが政治の経営の成果だ」と語った。

「水道事業の民営化」批判に反論

演説では、対立候補が批判してきた「水道の民営化」問題にも言及した。
村井氏は「水を売却した事実も、民営化した事実もない。導入したのは“コンセッション方式”だ」と強調。
「所有も責任も県にあり、水質チェックも職員が行っている。民間の創意を取り入れて効率化した結果、コストを10%以上削減し、全国で料金値上げが相次ぐ中、宮城県は値下げできた」と実績を示した。

「宿泊税」「半導体誘致」次の4年へ

次の4年に向けた政策として、半導体産業の誘致を「富県戦略の第2章」と位置づけた。
「トヨタ自動車東日本を誘致した時のように、今度は半導体で宮城の産業を押し上げる。熊本が成功したように、宮城・東北が次に続く番だ」と述べた。
また、宿泊税についても「批判はあるが、交流人口を増やすための投資」と説明。「海外観光客のうち宮城に来るのはわずか0.5%。逆に言えば、伸びしろがある」と意欲を示した。

さらに、「技能実習生や外国人労働者なしには産業が成り立たない。共存共栄で宮城を元気にしたい」と、包摂的な地域づくりへの姿勢を語った。

「県民とともに」雨の中のマイク納め

最後に村井氏は、集まった支持者に向けて「マスコミのデータでは勝っているとも負けているとも言われる。だが皆さんの力を借りれば必ず勝てる」と声を張り上げた。
「富県宮城の集大成として結果を残したい。明日の投票箱が閉まるまで、全力で戦う」と結び、鳴りやまない「村井コール」の中でマイクを置いた。

編集注
・発言内容は演説の主旨や文意を損なわない範囲で整文しています。
・選挙戦最終日の発言を中心に構成しました。

仙台放送
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