昨シーズン現役を引退した東レアローズ静岡のレジェンド米山裕太さん。いつの日か監督としてSVリーグ優勝を目指す彼の第2の人生に迫る。
“ミスターアローズ”が育成年代を指導
午後7時、トップ選手が帰った東レアローズ静岡の体育館に次々と中学生が集まってきた。
彼らはクラブが育成する15歳以下の選手たち。

そして、彼らを指導するのがレジェンド・米山裕太さん(41)。
「短い期間で結構成長を感じられるので、難しさもあるが、それが楽しさでもある」とやりがいを感じながら取り組めていると話す。
18年前、名門クラブの門を叩いた185㎝のアタッカー。
安定感のある守備力も評価され、1年目から主力に定着すると2009年からは日本代表でも活躍。
長年、日本バレー界のトップランカーであり続けた“ミスターアローズ”だ。
6度の日本一、そしてリーグ戦では史上3人目の400試合出場を成し遂げ、惜しまれながらも、昨シーズン限りでユニフォームを脱いだ。
米山さんは「将来SVリーグの監督になってリーグ優勝するという目標があります。ひと回りもふた回りも成長して、またこの舞台に戻ってこられるよう、次のステージも精一杯頑張りたい」と引退セレモニーで力強く宣言した。
この想いを胸に、彼が選んだ次のステージが育成年代の指導者だった。
楽しみ、挑戦する気落ちを伝えたい
現在は東レ静岡U15育成部の監督として子どもたちを指導。
派手さはなくても堅実なプレーでファンを沸かせてきただけに、週に1度、2時間の練習で最も大切にしているのは基礎の部分だ。
中でも欠かせないのはコート上での身のこなしにつながるマット運動で、自身も小学校から続けてきた。
米山さんによると「レシーブをする時、実際にフライングしたりローリングしたり、身体のいろんなところに負荷がかかる」といい、「40歳までやって、大きなケガなどもせずにやってこれた。それは少なからず小学生時代にやっていたマット運動が活きている実感がある」と自身の経験を話す。
指導する中には中学から本格的にバレーを始めた子どももいて、技術レベルは様々。
それでも全員に同じ熱量で伝えたいのは、自身が貫き続けてきたバレーボールを楽しむことだ。
そして…。
「バレーボールの場は“挑戦する場”。ミスを怖がらずに練習してきたことを発揮できるようにやっていきましょう」と選手たちに声をかける。
指導者と営業マンの2つの顔
“挑戦の場”に立っているのは彼自身も同じだ。
初めて立つビジネスの世界は米山さんにとって未知なるコート。
最初は名刺の渡し方1つとってもおぼつかなかったが、フロントスタッフとして協賛スポンサーの獲得を目指し県内各地を毎日駆け回り、汗を流している。
自分を育ててくれたクラブが、さらに発展していくために…。
現役時代、ともに高みを目指したチームメイトと立場が変わっても切磋琢磨する充実の日々を送っている。
「バレーボールの楽しさや東レアローズ静岡の魅力を伝えていく活動はすごく重要だと思う。その中でファンの人たちにチームを応援してもらえるような活動ができれば」と意気込みを語る米山さん。

バレーボールが紡ぐ第2の人生。
米山さんの挑戦は始まったばかりだ。
(テレビ静岡)
