福岡県田川市の松原保育園で、14人いた保育士のうち10人が、園児に対して殴るなどの虐待にあたる行為を行っていたことが分かりました。

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県と市は、10月20日に保育園を運営する社会福祉法人に対して改善勧告を行いましたが、子どもを園に預けていた保護者の間には、不安が広がっています。

保護者:
今週の月曜日(20日)に、10人もいたんだと初めて知りました。あり得ないですよ。もっと早く保護者にちゃんと説明してほしかった。

保護者:
今でも子供を通わせていますが、親としてもしっかりした説明がないと不安ですし、今後、どうしていいのかも分からない。

保護者も感じた“園の異変”

報告によると、園児が指示に従わないことやうまくできないことを理由に、殴る・たたく・頬をつねる・服を引っ張る等の行為をし…。

「頭悪いんか」といった心を傷つける発言をする、食べるのが遅い園児に対して嫌がっているにもかかわらず強引に食べ物を口の中に押し込む行為などを繰り返していた保育士たち。

中には、直接的に虐待行為には加担していなかったものの、身体的虐待を確認しながら放置した、「ネグレクト」と認定された保育士もいました。

8月に園長が保育の様子を撮影したカメラの映像を見て虐待に気付いたといいますが、保護者の中には、“園の異変”を感じていた人もいました。

保護者:
「やっぱりか」ということは正直あります。

話を聞いた保護者によると、変化があったのは、2~3年前。
今の園長に交代したあとに園の方針変更などがあり、複数のベテラン保育士などが退職したといいます。

保護者:
外に子どもを連れてお散歩に行くとかも「危険だから」とかでなくなったりとか。
ベテランの人とかが辞めたんだと思います。(園長と)働いている保育士さんとのコミュニケーションが取れていなかった。

実際に、県と市による保育士への聞き取り調査でも、「経験の長い保育士が離職して、それまでの相談のしやすさなどがなくなってきた」という声が挙がっていました。
こうした保育体制の変化が、多数の保育士による虐待行為へとつながってしまったのでしょうか。

「職場の問題と本人の問題が複雑に絡み合う」

子どもを育てる人々にとって、衝撃的とも言える今回の事態。
園はこれまでに、虐待をしたなどとして20代の保育士2人を懲戒解雇しており、「今後は、再発防止と保育の質の向上に全力で努めてまいります」としています。

『サン!シャイン』は、保育園の運営と経営支援を行う「SCOPS(スコップス)」代表の森川 慶氏をゲストに迎え、今回の虐待事案について伺いました。

「SCOPS」代表 森川 慶氏:
全国のほとんどの保育園の先生たちは、毎日一生懸命ひとりひとりに寄り添って、保育をしていらっしゃると思うんです。だた、これまで2~3人の先生が不適切保育をしてしまうことはあったものの、10人という集団的に関わるのは、かなり異例の事態だと思います。
市の報告書を見ると、報告された行為は7月~8月のわずか20日間の間に行われており、それほど短期間でこれほどの行為があったことに衝撃を感じました。

スペシャルキャスター カズレーザー氏:
ぼくも、しつけの一環で(子どもの時に)たたかれたことなどはありましたが、記憶として。ただこういう報告に挙がってくるというのは、そういうレベルとは全く違う?

「SCOPS」代表 森川 慶氏:
今は状況が変わってきていますので、昔はよかったことも、駄目なことはたくさんあるので。(今の時代)全く許されない。

谷原章介キャスター:
(保育士の中には虐待を)見過ごしていた人、これはただ単に放置をしたとも取れますし、10人の中において、恐怖、怖かったから報告できなかったということも考えられるとなると、どうしてそういった空気感になったのか。

「SCOPS」代表 森川 慶氏:
やはりこれは、職場の問題と本人の問題が複雑に絡み合っているのだと思います。
一概に原因はこれだと指摘できないからこそ、不適切保育という問題の解決がなかなか進まない原因だと思います。
(今回のケースは)当たり前になっていた、不適切保育・虐待が。それがもう全体がまひしていて、誰も止める先生がいなかったということが、ここまで集団的に広がってしまった最大の要因だと思います。

――今後子どもたちのケアは
専門家の方が入っていただいて、丁寧にケアしていただくことが必要だと思います。

――今回、解雇された保育士は別の場所で就職できる?
現実的には、なかなか本人もこのあとに保育士を続けるというのは、難しいのではないかと…。

経済学者 中室牧子氏:
法的にはそれが規制されているわけではないと思います。性犯罪の場合は、DBSといって、教育機関に再就職することは法的には難しくなっていますが、不適切保育の場合は必ずしもそうとは言えない。

――保護者ができる対策は?
「SCOPS」代表 森川 慶氏:
(親同士でも)お宅の息子さんなにか変わったことはありませんか?という会話の中で、実は私の子ども嫌がって…というのもあります。(登園拒否など)一概には言えない部分もありますが、例えば大泣きするとか、先生が怖いと言ったりというのは、一応気にかけた方がいいと思います。ひとつのサインだと。

――今後どのような改善が見込まれる?
これから外部の方や専門家の方が入って、本当の一番のコアな原因が何かをつきとめて、例えば人手不足なのか、人間関係なのか、保育の方針なのか、その原因をつきとめるのがまずは第一にやることだと思います。

谷原章介キャスター:
体制変更もそうですが、まずは保護者に対するきちんとした説明と、被害を受けた児童のケアをしっかりとしてほしいですね。
(「サン!シャイン」 10月24日放送)