止まらない金の価格高騰。あまりの値段の高さに選挙で有権者に選ばれた証である議員バッジの材質を“本物の金”から“金メッキ”製に変更して、経費削減を図る動きが広がっている。
金の価格高騰で18金からメッキに
各自治体で材質などが異なる議員バッジ。そのため国会議員のバッジよりも地方の議員バッジの方が、値段が高いケースもある。しかし、あまりに高くなった金の価格を受け、長年の慣例を見直す動きが相次いでいるのだ。

福岡県議会(定数87)は、議員バッジの材質を現在の『18金』から『金メッキ』に変更すると発表した(2025年10月)。県議会によると、規定では、在職中の議員には、身分証明として議員バッジの着用を求めている。直径18ミリで18金製の『本章』と直径13ミリで20金製の『略章』があり、県は貸与ではなく交付している。議員を辞める際にも返還する必要はない。

県議会事務局によると、本章の購入費は、2018年度に1個3万2400円だったが、2022年度には、1個6万6000円と4年で2倍以上も値上がりしているという。今回、2027年に予定されている県議会議員選挙に向け、2026年度に購入した場合の参考見積もりをとったところ、議員バッジの予備や略章を含めると、総額で3000万円を超えることが分かった。

本章を金メッキにした場合、1個1万5000円~1万6000円程度となり、略章も廃止すれば、購入費は、総額200万円程度にまで抑えられる見込みと県議会事務局は試算している。

大幅なコストカットに服部誠太郎・福岡県知事も「財政的にも助かるし、事業の見直しとして非常にありがたい」と議会の動きに歓迎の態度だ。

独自調査で判明“高いまま”の自治体も
現時点で福岡県内の各自治体の議員バッジは、どうなっているのか?県内60市町村全てを対象に材質や価格について独自調査したところ、7割以上の自治体が、1個5000円前後の『金メッキ』仕様であることが分かった。

一方で、価格が高かったのが、福岡、北九州の両政令市と久留米市の3市。

このうち北九州市では、『18金』だった議員バッジの材質を『銅に金メッキ』という仕様に変更(2025年2月)。その結果、価格は1個約2万5000円から半額以下の1万円余りになったという。

北九州市議会で議会運営委員長を務める西田一議員は、「昨年の時点で金の高騰が続いていたので、このまま同じバッジを揃えると大変なことになるんじゃないかということで、少しでも経費削減という動きは当然広がるものだと思っています」と話す。

経費削減は、議会側にとっても当然の流れと受け止めているようだ。
都議会では議員バッジの『転売』が問題に
一方、バッジ1個あたりの購入費用が約2万3000円と最も高かった福岡市。市議会の事務局に問い合わせたところ、「議会から材質変更の提案を受けていないが、提案があれば前向きに検討したい」という回答だった。

現在6期目の福岡市議、中山郁美議員(共産党)は、計6個の議員バッジを所有している。本物の金が使われているため、現在の値段は、総額で約14万円。

「国会のバッジの値段が、福岡市より安い1万5000円くらいと聞いている。私達もどれだけ費用がかかっているのか調べているが、高すぎるということになれば、見直すこともあるし、それは議会での議論が前提になる」と中山市議は語る。

金の価格高騰を巡り、各自治体で対応が分かれる議員バッジ。実は、今、東京都議会の議員バッジの『転売』が問題となっている。都議会のバッジは、金メッキではなく、『10金』が使われていて、オークションサイトで、3万4100円で落札されたという。議員バッジの裏には、番号が記されているため、「さすがに現役議員による出品ではないだろう」と見られているが…。

税金で購入され、交付される議員バッジ。ネットでの転売は論外だが、納税者が日々の生活に疲弊する中、果たして高額なものを使用する必要があるのか。長年の慣例を見直し、費用を削減する議論が待たれる。
(テレビ西日本)