静岡県の総合防災訓練は熱中症を防ぐため、9月1日前後から10月へと時期を変えて行われました。今回の訓練の成果と課題を検証します。
加藤洋司 解説委員:
心配された天候も何とか持ち、過ごしやすい気温の中でことしの総合防災訓練が行われています。いま行われているのは段差が生じ、橋が通行できなくなった時への対応です
夏の猛暑の時期を避けて10月後半に移され、2025年の訓練は10月19日、焼津市と藤枝市をメイン会場に行われました。
会場アナウンス:
現在、指揮隊長のもとに災害救助犬静岡および救助隊長が集まり、救出方法を協議しております
焼津市にある大井川防災広場では、土砂崩れによる家屋の倒壊を想定した実践的な救出訓練も行われました。
杉本真弓カメラマン:
焼津市の津波避難施設からいま要救助者が自衛隊員によって救助されて行きます
訓練には毎回重点テーマが設けられています。
2025年は「物資の円滑な輸送」「医療救護体制の確立」「次世代の積極的な参画」などを意識して2つの市の約70カ所で行われ、3万1000人が参加しました。
訓練には行政や関係機関だけではなく幅広い世代の地域住民も参加します。
福島流星 記者:
災害関連死を防ぐためには避難所の環境も大切になってきます。今回避難所の設営訓練に参加しているのは地元の中学生です
青島北中学校の生徒 約80人は体育館でパーティションや簡易ベッドの組み立てを体験し、それぞれの世代に出来ることを学んでいました。
生徒:
(ベッドの設営は)力が必要で、すごく大変でした
生徒:
避難所設営が初めてだったので、やり方を覚えることから始めた。その辺は苦労しました
ペットの同行避難訓練も行われました。
エサなど物資の備えだけでなく日頃のしつけも大切で、避難の体験は貴重な機会となります。
福島流星 記者:
現在、藤枝市の気温は24℃をさしています。訓練に参加しているワンちゃんも暑さへの心配はなさそうです
参加者:
この位の時期の方が良いのでは
参加者:
ワンちゃんも暑いと足の裏をやけどしてしまう。連れて歩けないので抱っこしないといけない。人間の負荷も余計に増えてしまう。こういう涼しい時期にやってもらえた方がありがたい
医師:
どうしましたか?
患者:
柱が倒れてきて胸にあたりました
南海トラフ地震が起きた時、県内で想定される死者は最大10万3000人。
その時、ひとりでも多くの命を守るため、優先順位や治療方法の判断力を高めようと取り組む人たちがいます。
新しい技術の研究・開発に取り組む人たちもいます。
焼津港で披露されたのは海と陸の計測データから海底の状況を可視化する技術。
安全な海上輸送に貢献したいと企業は話します。
訓練のあと鈴木知事は…。
鈴木康友 知事:
新しい技術を活用し、船の進入路を確保するといった新しい取り組みが行われている。こういう訓練をしっかりと訓練で終わらせずに、いざという時に備えてしっかり経験を積んでいくということが必要ではないか
地震の多い日本。
東海地震説が提唱されて以降、現在の形での総合防災訓練は1979年に始まり、これまでに44回行われてきました。
時期を移して行われた今回は熱中症のリスクがなく、参加した人からは好意的な声が聞かれました。
参加者:
気候が良いので何か来る気になって。ゆっくり見られるのでこの季節で良かった
参加者:
(Q.訓練は大切?)年に1度とは言え、定期的にくり返すことでいろいろ忘れていた部分を思い出せる
鈴木康友 知事:
訓練によって倒れるような人が出ては困りますので、当然、気象条件など勘案して時期の良い時に訓練をやるというのはこれは妥当ではないか
8月末から9月初めの防災週間に県内すべての市町で行われていた時には県民82万人が参加したこともありました。
これから問題となるのは、県民全体が高い防災意識を共有する機会をどう作るか。
備えを見直し、地域の絆を考えてもらうきっかけ作りが重要です。