石破茂氏の総理在職は386日、国民から期待されながらスタートしたものの「らしさ」を貫き通すことができなかったその軌跡を、石破さんの言葉で振り返ります。
衆議院・額賀福志朗議長:
石破茂君を内閣総理大臣に指名することにいたしました。
あの日から1年余り。
石破茂前首相:
等閑視することはございません。救護船として活動を行う(おこのう)こと。
独特の語り口に…。
石破茂前首相:
顔が怖いと言われているので、メガネをかけると表情が柔らかくなると。
時折見せるユーモア、親しみやすさ。
世論調査では「次の首相に最もふさわしい人」の常連だった石破さん、期待に応える時が来ました。
“石破らしさ”をどのように出していくか、石破さんは肝いり政策を次々本格化させました。
石破茂前首相:
防災庁を設置したいと思っております。
石破茂前首相:
最低賃金の引き上げを後押しし、2020年代に全国平均1500円。
石破茂前首相:
地方創生2.0として再起動させます。
「地方創生」では、山陰の事例をたびたび全国に紹介しました。
石破茂前首相:
島根の隠岐諸島の海士町では、中学生が一生懸命『うちのまちをどうしようか』ということをディスカッションしていて。
日印経済フォーラムでは…。
石破茂前首相:
私の地元鳥取県では、島根県とともに『山陰インド協会』が地方創生に新たな力をもたらしております。鳥取県と(韓国の)江原道、これがもう30回近い意見交換。そういうような人口減少とか一極集中とか、そういう議論を行っている。
鳥取県出身の総理として、山陰両県の地方創生を後押ししました。
“らしさ”はこんなところでも…。
石破茂前首相:
論点は出尽くしています。それが本当に大勢の方々のご理解を得るにいたっているかということもございます。それでも駄目なのだというご意見をあるわけで、それをどう考えるのかということでございます。
独特の語り口は、総理になっても健在でした。
アメリカ・トランプ大統領との日米首脳会談後の共同会見の場で、アメリカの記者からの「仮にアメリカが日本に関税をかける場合、日本は報復関税をするか?」との質問に対しては。
石破茂前首相:
仮定の質問にはお答えいたしかねますというのが、日本のだいたいの定番の国会答弁でございます。
と切り返すと、トランプ大統領は「ベリー グッド アンサー」を連発、記者の笑いも誘いました。
そして戦後80年迎えた中、10月11日に「所感」を発表しました。
「偏狭なナショナリズム、差別や排外主義を許してはなりません。先の大戦や平和のありようについて能動的、積極的に考えて将来に生かしていくことで、平和国家としての礎が一層強化されると、このように私は信じております」
一方、「政治とカネ」をめぐる対応で“石破らしさ”が期待される中、“らしくない”行動も…。
石破茂前首相:
ご家族の労いなどの観点から用意をしたものでございます。いろいろな思いを持たせていることは申し訳ない。
若手議員の会合で10万円分の商品券を配っていたことが明らかになり、批判を浴びました。
そして、総理就任直後に打って出た衆院選。
自公政権は少数与党に転じ、国会対応では“石破らしさ”は影をひそめました。
立憲民主党・野田佳彦代表:
制度の持続可能性を図るべきではないか。
石破茂前首相:
高額療養費の見直し自体は実施させていただきたい。
予定していた高額療養費制度の見直しは見送りに追い込まれました。
石破茂前首相:
患者の皆様にご不安を与えたまま見直しを実施することは、望ましいことではございません。
そして、2025年7月の参院選でも大敗。
自民党は2度の国政選挙に敗れ、党内では総裁選の前倒しを求める「石破おろし」が活発化。
続投に意欲をみせたものの、石破さんは退陣に追い込まれました。
石破茂前首相:
自由民主党総裁の職を辞することといたしました。
「政治家としての集大成」としてつかんだ総理の座でしたが…。
石破茂前首相:
結果として“らしさ”を失うことになったという、一種なんて言ったらいいんでしょう、『どうしたらよかったのかな』という思いはございます。
“石破らしさ”を貫き切れなかった386日、「毀誉褒貶」にさらされた石破内閣に幕が引かれました。