9月11日、東京などに大きな被害をもたらしたゲリラ雷雨。
目黒区では、わずか1時間に134mmもの猛烈な雨が降ったほか、品川区では立会川が氾濫するなど、都内各地で浸水被害が相次ぎました。
目黒区にある東急・自由が丘駅周辺の当時の映像では、大量の雨水が濁流となって画面奥から手前の方に流れています。
マンホールからも噴き出し、人は水を避けて建物入り口へ。バイクはなかなか前に進めません。
雨水が波立つ道路は、まるで川のようです。
周辺一帯は大規模な浸水被害に見舞われました。
一体なぜ、このような状況に陥ったのでしょうか。
取材班は、都市の地形と災害を研究している帝京平成大学の小森次郎教授と自由が丘駅周辺を検証。
小森教授が指摘したのは地域特有の点です。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
「暗渠(あんきょ)」という地形がずっと続いています。
注目したのは「暗渠」と呼ばれる、地下にある見えない川の存在でした。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
元々は谷底ですから、川が流れていた。九品仏川という名前がある川が、ずっとこの緑道に沿って流れていた。都市化を進める中で、上にコンクリートをかぶしたり、蓋をかぶしたりした。
自由が丘駅近くの緑道は、もともと九品仏川が流れていたルート。
しかし、1970年代に周辺の土地を有効活用するため、コンクリートなどでふたをし、現在は下水道として利用しています。
9月のゲリラ豪雨では、気づかないうちに暗渠内の水位が上がり、水があふれ出した可能性があるというのです。
自由が丘駅の西側にある九品仏浄真寺から続く緑道は、一見して川とは分かりません。
記者:
両側、ちょっとだけ坂になっているような。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
仕切り弁とかあると(いうことは)、このビルとビルの間からも細い下水管、さらに細い下水管が何本も何本もここに入ってきてる。それがことごとく、暗渠の中に入れずにふさがれるので、そこからも水が出てくる。
普段から緑道を利用している人は、地下に暗渠があることを知っているのでしょうか。
職場が近くの人は「(川が流れていることは)知らなかったです。あっという間に上がったので水が。びっくりしました。(Q.冠水して初めて川があったと知った?)そうですね」と話し、近所に約30年住む人は「(地元の人以外は)知らないと思います。見えないですからね」と話していました。
同様の環境は地方都市にもあるといいます。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
東京だけではなく、地方都市でも国内ではよく見られる。(東京は)神田川、目黒川など大きな川以外は暗渠化されている場所が非常に多い。
同じ日のゲリラ雷雨で氾濫した品川区の立会川も上流部が暗渠だということです。
東京都によりますと、都内の暗渠は18本あり、主に下水道として使われているということです。
気づかぬうちに水位が上がり、あふれる危険が潜む“暗渠”。
それを知るヒントは緑道の石碑です。
両側に住宅が広がる杉並区の緑道。
その地下には桃園川という暗渠があります。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
(Q.橋の石碑があるが元々は橋だった?)まさにそうですね。これ(地面に残っている跡)はおそらく元々の橋の跡だったのかもしれない。古い地図を見ても、ここは通りがあって、そこにこの幅くらいの川をまたいだ橋が地図にも書かれている。この間みたいに大雨が降って、下にある暗渠が流すことができる以上の水が流れるようになると、もう川がないのと同じような状況になりますので、この辺に降った雨は暗渠には流れ込まずに、この辺でどんどん水かさを増すという、浸水が起きるということですね。
こうした石碑から、そこにかつて橋があったことや、もともとは川だったことを知ることができます。
帝京平成大学 人文社会学部・小森次郎教授:
暗渠って、結局、ふたを剥がせば川なので。暗渠ですから、大雨の川に落ちることはないですけど、逆にそこから水があふれてくるとか、そういったリスクは常にある。日ごろ見えてないことで、知らない間にリスクのある場所にいること自体が危ない。日ごろから家の周りや勤め先の周りを歩いて、地形を見ておくことかなと思います。
10月に入っても、海面水温が例年よりも高い状況が続く日本列島周辺。
雨雲が予想より発達する可能性があるため、気象庁は引き続き注意が必要としています。
横浜国立大学・佐藤正樹教授:
海面水温は今年非常に高かった。歴代1位ぐらいの時期もあった。水蒸気量も例年と比べて非常に多かった可能性はある。温暖化という時代に入ってしまったという認識が必要。暑いだけでなく、いったん雨が降ると大雨の被害が起こりやすい。
東京の地下を流れる見えない川「暗渠」。
隠れた都市型水害のリスクを抑えるには、暗渠を把握し、ハザードマップなどで浸水想定域を把握すること。
また、自治体にも浸水対策の徹底が求められます。