品薄、備蓄米の放出、価格高騰など、コメをめぐる環境の不安定さが心配される中、新潟県の大学生がある思いを持って、実家で生産されたコメを商品化した。自身が食べて育った“おじいちゃんのコメ”を自ら販売するに至った思いを取材した。

大学生が興したコメ販売の新事業

新潟県三条市のスーパーに運び込まれた160袋のコメ。

熊倉一真さん
熊倉一真さん
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「やっとこの日が来た」と感慨深そうな表情を見せるのは、開志専門職大学で会社経営などを学ぶ熊倉一真さんだ。

学生でありながら、2025年8月、コメを販売する事業を立ち上げた熊倉さんがこの日搬入したのは、自身が商品化したコメ『ゆいつ』だ。

おじいちゃんが作る唯一無二のコメ『ゆいつ』

『ゆいつ』は熊倉さんの祖父・本田寿さんが栽培してきた“特別栽培米コシヒカリ”。

熊倉さんの祖父・本田寿さん
熊倉さんの祖父・本田寿さん

普通に栽培されるコシヒカリよりも農薬など化学肥料を50%減らしている。

熊倉さんは「小さい頃から食べているおじいちゃんの作ったおいしいコメなので、多くの方に味わっていただきたいと思った」と、商品化に至った気持ちを振り返る。

最近は足が悪く、以前のように田んぼに出ることがなくなったという祖父・寿さんだが、熊倉さんにとって“おじいちゃんのコメ”は“唯一無二”のコメ。

これが『ゆいつ』の名前の由来である。

「これまでのコメは安すぎた」持続可能なコメ生産の実現へ

熊倉さんは、実家から3トンのコメを自ら買い取り、原価計算からパッケージデザインまで半年かけて1人で行ってきた。

パッケージデザインも自ら手掛ける
パッケージデザインも自ら手掛ける

米袋も湿度からコメを守る機能のあるものを選ぶなどこだわりは多い。熊倉さんがこうして商品化を決意した理由は、昨今のコメ事情にもあるという。

「今まではコメの価格が安すぎたのではないかと感じていた」

農家が減少し、日本の主食・コメの生産が将来的に維持されるのか危惧される中、祖父が作る自慢のコメから持続可能な農業を考えたい。

商品化の裏には大きな問題意識があった。

今はまだ米粒のような事業だが…熊倉さんの抱く大きな夢は

熊倉さんの思いを受け、販売協力を申し出たのは、新潟県三条市の『スーパーマルセン』の太田雅悠専務だ。

太田専務は「一手間、二手間、かけて消費者においしいものをしっかりと届けようという気持ちの部分が共感できる」と見守る。

スーパーにとっても、取り扱う商品が増え、消費者の選択肢が増えることは魅力だ。

熊倉さんが商品化した『ゆいつ』
熊倉さんが商品化した『ゆいつ』

販売初日、『ゆいつ』は5キロ5054円で店頭に並んだ。

ズラリと並んだ『ゆいつ』を眺める熊倉さん。

「今はまだ米粒のような小さな事業だが、今後は全国の人に味わっていただけるように頑張りたい」

“唯一のコメ”が並んだその景色は、熊倉さんにとって挑戦の始まりだ。

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NST新潟総合テレビ
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