東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、新潟県議会は10月16日、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官の要望を受ける形で村瀬長官や東京電力の小早川智明社長などを参考人招致しました。この中で、東京電力の小早川社長は“地域への貢献”として、県に対し1000億円規模の資金を拠出することや柏崎刈羽原発1・2号機の廃炉を具体的に検討する方針を示しました。
■“地元のメリット”求める声に政府・東電は地域振興の取り組み強化
10月16日、県議会の前で市民団体が抗議の声をあげる中、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官や東京電力の小早川智明社長が県議会の連合委員会に参考人招致されました。
ここで東京電力の小早川社長が表明したのは、地域貢献に向けた資金の拠出です。
【東京電力 小早川智明 社長】
「新潟県内における地域経済の活性化や安全・安心な暮らしのための基盤整備という目的の実現のために、当社が拠出する資金をご活用いただく形で貢献していきたい」
今年3月の参考人招致の際、国が再稼働の重要性を強調したのに対し…
【自民党 高橋直揮 県議】
「本県の地域経済活性化のためにどのような取り組みを考えているのか、長官の所見を伺いたい」
原発再稼働による“地元のメリット”が議論の一つに。5月には花角知事も国に対し、原発立地地域の振興に関する要望書を提出。
【花角知事】
「柏崎刈羽原発で発電される電力が首都圏に送られているだけで、地域にとって恩恵を受けていない。メリットがない」
柏崎刈羽原発でつくられた電力を直接消費しない県内でもメリットを享受できる仕組みを求める声が大きくなっていました。
【自民党県連 岩村良一 幹事長】
「電力輸出県であるところは他県にない特別な事情」
こうした声の高まりを受け…
【石破首相】
「地元の要望も踏まえながら、原発立地地域の生活環境や産業基盤の整備を進めるための特別措置法について対象地域を拡大するなど、地域振興の取り組みを着実に強化してください」
政府は関係閣僚会議で地域振興の取り組みを強化する方針を決定。この会議に出席した東京電力の小早川社長も地域振興に力を入れる考えを明らかにしていました。
【東京電力 小早川智明 社長】
「地域経済の活性化などに向けた資金的な貢献やGX・DX投資などの促進に努めていく」
■東京電力 新潟県に対し1000億円規模の資金拠出
地元のメリットに関する質問は10月16日の連合委員会でも…
【自民党 高橋直揮 県議】
「地域経済の活性化に向けて取り組んでいく旨を表明されているが、具体的にどのように取り組んでいくのか東京電力に伺う」
【東京電力 小早川智明 社長】
「資金拠出の額については、1000億円規模を考えている。この資金拠出を進めていくにあたって、今後、県と十分にご相談させていただきたいと考えている」
東京電力は県に対し1000億円規模の資金を拠出するとした上で、その資金を〈1〉新たな事業の創出〈2〉雇用の促進〈3〉人材育成に活用する方針を示しました。
さらに、その資金を活用して避難計画の実効性を向上させるために除排雪体制の強化や屋内退避施設の整備にも協力するとしています。そして、国も…
【資源エネルギー庁 村瀬佳史 長官】
「6方向への放射状に伸びる避難経路や除排雪体制の強化などについて協議の枠組みのもと、県が実施する調査の状況を踏まえつつ、速やかな整備を進めていく」
避難道路の整備などを国が予算を確保する中で進める方針を改めて示しました。
■1・2号機 6号機の再稼働後1年半程度で“廃炉”判断
さらに、東京電力の小早川智明社長は柏崎市の桜井市長を含め、7基の原発が集中立地することへの不安の声があることを踏まえ廃炉に言及。
【東京電力 小早川智明 社長】
「柏崎刈羽原発の安全運転に万全を期すために、柏崎刈羽原発1号機・2号機に関して廃炉の方向で具体的に検討を進めることにする」
6号機の再稼働後1年半程度で1・2号機について廃炉を判断するとしました。
■国・東電の姿勢に疑問の声も「金さえ出せば黙るだろうと…」
こうして様々な要望に応える姿勢を示す国と東京電力に対し…
【未来にいがた 樋口秀敏 県議】
「皆様方がやっていることは『あれくれ』『これくれ』『金出せ』と言ったら、『はい、それも出します』『あれも出します』と、まさに新潟県民のほほを札束で叩いているようなものじゃないですか」
【リベラレル新潟 杉井旬 県議】
「再稼働の是非を判断するという段階になっての資金拠出の決定は、誠意というよりは交換条件であって、取り引きにしか見えない。金さえ出せば黙るだろうと思っておられるのでしょうか」
【東京電力 小早川智明 社長】
「地域経済の更なる発展に資する取り組みを求める声もいただいている。こうした状況も踏まえ、当社からの地域貢献について表明させていただいたものである」
■再稼働へ信頼回復目指す東電「一歩一歩確実に改善を」
さらに県民意識調査の中間結果も踏まえ、東京電力が目指す信頼の回復に対しても疑問の声があがった16日の県議会。
【資源エネルギー庁 村瀬佳史 長官】
「関係閣僚会議では、国としてやれると思うことを最大限対応すると決め、きょうの機会に説明させていただいた。きょうのご質疑も大変貴重な機会ではあったが、日々の取り組みの中でご理解を深めていただく。謙虚な気持ちで一歩一歩、丁寧に引き続き(説明を)進めていきたい」
【東京電力 小早川智明 社長】
「私どもが再稼働を果たし、継続していくことに関して、相当の努力をしながら行動と実績でしっかりとした積み重ねがない限り、なかなか地域の皆様からのご信頼を回復することはできないのではないかと思う。地域の様々なご意見を、県民を代表する議員の方々からいただいたことも貴重な機会だったと思うので、こうした様々なご意見・ご見解を含めて、一歩一歩、確実に改善して、その姿をしっかりと発信してまいりたい」
一方、議会で東電が1000億円規模の資金の拠出や1・2号機の廃炉に言及したことについて花角知事は…
【花角知事】
「県民がどう受け止めるのか見極めると言っている。だから、これについて県民がどんなふうに受け止めたかを見極めていきたい」
県民意識調査の結果などを踏まえ、再稼働について判断するとしている花角知事。果たして今回の説明はその判断にどう影響するのでしょうか。