広島県では、児童虐待の相談件数が、前年度よりも269件増え、過去最多を更新しています。そうした中、児童虐待の現状について寸劇を通じて理解を深めてもらおうという、県内でも初めての取り組みが行われました。

【劇中】
(父親)「もみじ~!今帰ったぞー!」
(娘)「お父さん!もしかしてまたお酒飲んで帰ってきたの? お母さんがいなくなったっていうけど、お父さんがそんなだからお母さん この家出て行っちゃったんじゃない!もう2年も帰ってこないのよ」
(父親)「なんだと!もみじ!(叩く)」
(娘)「痛い!」

中学1年生、およそ200人の前で披露された「オリジナル劇」。
児童相談所の職員と中学校の先生、警察官、県立広島大学の学生が一つになって作り上げたものです。

そのキッカケは…

【東部こども家庭センター:前原一教所長】
「児童相談所は学校とか関係機関から連絡を受けてその対応をしている「受け身の対応」しかしていない。もっと攻めの仕事をしたほうがいいんじゃないかと」

昨年度「6649件(前年度比+269件)」と、過去最多を更新した県内の児童虐待相談対応件数。

児童相談所や警察は、これまで合同で、緊急性の高い事案に対応するための訓練を行うなど連携を強めてきましたが、今回、福山市などを管轄する東部子ども家庭センターなどは子どもたちに虐待などについての理解を、より深めてもらう必要があると考えました。

【学校長】
「児童虐待の対応も したことがあります。皆さんに伝えたいことは何かあった時にすぐにSOSを出せる学校にしたい」

早期の段階で介入することが重大な虐待の防止につながる虐待への対応。

家族の次に身近な存在となる友達や先生など周囲の人の気づきが重要になるほか、子ども自らがSOSを発信しやすい環境づくりや正しい知識を身につけることも大切だといいます。

そのため今回の劇では…。

【劇中】
(娘)「結局大人で勝手に決めちゃうんじゃないですか?気が付いたら私施設に入っちゃっているんじゃないですか?」
「まあいろいろ心配になっちゃうよね」

「楽しませる」ことではなく「リアルに伝える」ことを意識し、児相への通告から一時保護、家庭への復帰までの一連の流れを紹介します。

【劇を鑑賞した生徒は】
「(これまでは)大人たちに相談するのは怖いなと思ったりしていたが、きょうの劇をみて大人が優しく自分の意見を聞いて反映して対応してくれる知って相談しやすいと心が軽くなった」

【東部こども家庭センター:前原一教所長】
「こういうことを通して子どもたちが大人になった時に虐待とはこういうことなんだなと知っておいてもらうことと児童相談所に相談したらいいんだなということが分かってもらえれば将来的には重篤な虐待、死亡事例が少なくなっていくと思っている」

【スタジオで補足解説】
広島県全体の児童虐待相談の対応件数は、右肩上がりとなっていて、昨年度が6649件。特に「広島市」での数字が350件ほど増えたということです。

特徴としては、虐待者のおよそ9割は血のつながりのある「実父と実母」で虐待相談の中で多いのが「心理的虐待(約50%)」。具体的には子どもの見ている前で夫婦間で暴力を振るう「面前DV」が多いということです。

例えば「玄関前で子どもが怒られている」「顔見知りの子どもの表情が暗い」など身近で虐待が疑われる事案に遭遇した際には、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」に電話をしてください。

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。