「東京都議会議員 議員記章」
インターネットオークションサイトに出品されていたのは、議員としての身分を証明する大切なバッジでした。
価格は3万4100円。驚くべきことに、このバッジは落札されていたのです。
東京都議会議員の三野辺安弥さん(自由を守る会)は「転売されていること自体は本当に議員としてあるまじきことだ」と憤りを隠しません。
議員バッジの裏面には当選した選挙と番号が記されており、「現役議員が売っていたら番号で分かりますので、そういうことは現職の方はしないんじゃないか」と指摘します。
■背景にあるのは金の高騰
なぜ議員バッジが転売されるのか。その背景には「金の高騰」があります。
ここ数年、金の価格は右肩上がりで、2015年に1グラムあたり5383円だったのが、先月には初めて1グラム2万円の大台を突破しました。
都議会議員のバッジには「10金」が使われており、その単価は4万7355円。前回配布された時の3.6倍もの価格になっているのです。
■”金メッキ”製に変更でコストは約10分の1に
大阪市議会では、金製のバッジから金メッキ製への変更が行われました。
大阪市議会議員の本田リエさん(大阪維新の会)は、「金がすごく高くなってきたので、メッキにしようという提案を令和3年にさせてもらった」と語ります。
純金製と金メッキ製を比較しても見た目の違いはほとんどありませんが、価格は大きく異なります。
純金製のバッジは1つ5万円(2021年当時)ほどだったのに対し、金メッキ製はわずか5600円と大幅なコストカットが実現しました。
■純金製廃止に反対の議員「最後まで本心明かさず...」
当時議長を務めていた本田議員によれば、この変更には反対意見もあったといいます。
【大阪市議会 本田リエ議員】「反対された会派さんが何を根拠に反対されていたのかは最後まで本心はおっしゃらなかった。やっぱり金の方が重みがあるからというところは、もしかしたらあったのかもしれない」
なお、大阪市議会では選挙で落選し議員資格を失うとバッジを「回収する」という運用をしており、転売の恐れはなかったそうです。
■徳島県議「どんなものでもいい...」
近畿・徳島で現在も金製を使用している府県は奈良県議会、和歌山県議会、徳島県議会。
徳島県議会事務局の大屋英一副局長は「従来からずっと14金です。価格は直近の令和5年(2023年)の時が、1個あたり3万9050円です」と説明します。
徳島県議会では金製を変更する議論はないとのことです。
徳島県議会議員の北島一人さん(自民党県民会議)は「私自身は、14金でなかったらダメとか、そういう感覚ではなくて、やはり議員であるということが分かれば、どんなものでも極端に言えばいいのかなと思っています」と話します。
北島さんは民間企業に勤めていた経験から「社章などとか、同じような素材でも全く問題ない」と強調します。
■議員バッジは「皆さんの思いが詰まっているもの」
徳島県議会でも東京都議会と同様に、当選のたびに14金製のバッジが支給され、「回収する」というルールもありません。当選2回ならバッジも2個となります。
北島議員の父と祖父も県議会議員を務め、「父のものも、祖父のものも持っています」と、三代にわたり議員バッジが家庭内に保管されているといいます。
北島議員は「やっぱり皆さんの思いが詰まっているものと私は思っていますので、議員を辞めたから転売するなんて、私の感覚では考えられないですね」と語りました。
徳島県議会事務局によると、徳島では今のところ転売は確認されていないといいます。
有権者から支持を得た証しともいえる議員バッジ。しかし金価格の高騰とともに、その金銭的価値が増大し、転売される事態も発生しています。バッジの素材を見直す自治体がある一方で、伝統を重んじて金製を維持する議会もあります。
税金で作られた議員バッジが、個人の収入源となることは避けるため、転売できない仕組みづくりが必要、という議論がでることそのものが、政治不信をさらに助長するともいえそうです。
(関西テレビ「newsランナー」2025年10月8日放送)