学生三大駅伝の開幕を告げる「第37回出雲駅伝」が、島根県・出雲大社からまもなくスタートする。箱根へと続く大事な初戦を制するのははたしてどの大学になるのか。混戦必至の今大会に向けた、箱年王者・青山学院の対策にも注目だ。

青学は夏合宿でスピード強化

新チームが発足し、長く暑かった夏を経て、11月の全日本、1月の箱根へと続く、学生三大駅伝の大事な初陣「出雲駅伝」が10月13日(月・祝)に島根県・出雲市にてスタートする。

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コースは、出雲大社正面鳥居前をスタートし、出雲ドーム前でフィニッシュする6区間45.1km。10区間217.1kmの箱根駅伝に比べると、距離は約5分の1ほどだ。他の駅伝に比べると短いコースが故に速さが求められることになり、出雲駅伝が“スピード駅伝”と呼ばれる理由がまさにここにある。最終6区での逆転劇や1区から6区までめまぐるしく順位が変動する、目の離せないレース展開が特徴だ。

新潟・妙高市での合宿(2025年9月)
新潟・妙高市での合宿(2025年9月)

1月の箱根駅伝で連覇を果たした青山学院大学は、箱根3連覇を狙うと同時に、三大駅伝3冠にかける思いも強い。初戦の出雲をなんとか制したいところだが、前回大会は3位に終わるなど、意外にも2018年に優勝したのを最後にその後勝てていない。

出雲駅伝前の9月、新潟県・妙高市で夏合宿を取材した。

青山学院大・原監督(2025年9月)
青山学院大・原監督(2025年9月)

青山学院大学 原監督:
我々は1年間を走り込み期やスピード期など4期に分けて、継続的に練習を行っています。
前回の出雲駅伝は、勝てるタイミングが何カ所かありましたが、そこにターゲットを絞り力を注いで調整していかないと、そう簡単には勝たせてくれない駅伝になったと思います。夏合宿の疲れがどうしても残る時期なんですよね。
ですから、今年我々は出雲駅伝から勝ちに行く、そういう思いで、今合宿をやっているので、
去年よりは距離走を少し少なくして、スピード強化の時期を前倒しにしてトレーニングやっています。

夏合宿のトレーニングは、長距離を走りながらも、トラック練習などスピードに焦点を当てたメニューが多かった。青山学院は今年、出雲駅伝を見据えて例年より早くスピード強化にあたっている。

トラックでは、1組7人程度のチームに分かれ、インターバルで高強度、低強度のランニングを繰り返す。特に高強度のランニングは、全力に近い速さで走るため、負荷がかかるが、短距離を含めたタイム向上を期待できるという。

キャプテン・黒田「自分たちの自力の部分が一番試されるレース」

原監督が選手一人一人に声をかけチーム全体の底上げを図る中、箱根で7人を抜き優勝に大きく貢献した現キャプテン・黒田朝日もチームをけん引する。

合宿中の黒田朝日選手
合宿中の黒田朝日選手

原監督:
キャプテン決めは私が決めるのではなく、学生が主体で選出して私が承認します。彼はキャプテンになったからといって背伸びすることなく自分のペースでトレーニングを積み重ねてくれています。それが結果として他の学生に対して良い模範生になってくれています。

黒田朝日選手
黒田朝日選手

黒田朝日選手:
キャプテンに就任したときに、自分は走りで引っ張っていくので、とチームには言っていて、本当にみんながよくついてきてくれていると感じます。
前回の出雲は、例年通り多少苦しいレースになりましたが、そこから先はしっかり修正して自分の中で最高のパフォーマンスはできたと思います。
順位は、常に優勝というところを狙っているので、そこに関してはやっぱり悔しいというか満足のいかない部分ではあります。

 仲間からタスキを受け取る黒田選手(2024年出雲駅伝)                     
 仲間からタスキを受け取る黒田選手(2024年出雲駅伝)                     

今年は、アンカー6区を走る黒田。2024年は区間3位に終わった3区を、こう振り返る。

黒田朝日選手:
自分の中でも難しいレースだったと思います。それでもレース内容としては、自分はラストスパートが苦手なところがあるので、それが最後しっかりできたという部分では1つ自分の成長に繋げられました。
(出雲は)自分たちの自力の部分が一番試されるレース。そこの部分を上げられれば、勝ちが見えてくると思います。

「ばけばけ大作戦」で臨む出雲

駅伝は、チームの総力が肝になるが、出雲駅伝は他のレースに比べ距離が短いため、より選手一人一人のスピード、力が重要になってくる。青山学院は、前回の箱根で往路復路を合わせた全10区間中6区間を走ったメンバーがすでに卒業している。

原監督は今年のチームについて、「速さと強さが未完成。まだまだ駅伝力が未知数」と話す一方で、出雲へ向けたこの夏合宿も経て「5000mのスピードや練習消化率を見ると去年の史上最強軍団と変わらぬ力強さを感じる」と総評する。

トラック練習で指導にあたる原監督(2025年9月)
トラック練習で指導にあたる原監督(2025年9月)

原監督:
出雲駅伝を勝とうと思えば、やっぱり9月の練習の持っていき方だと思います。9月の練習をしっかりと出雲仕様に持っていけば、おのずと結果はついてきます。短い距離なので、アンカーにエースをもっていくということも当然考えられますけど、それぞれの区間が短く、1区間の取りこぼしが大きな取りこぼしになるので、1区から攻めのレース展開をしていきたいです。

10月12日、本番前日の会見で今年の作戦名は「ばけばけ大作戦」と明らかにした。今回のメンバーは、黒田以外初めての出雲への出走となり、加えて6人中4人が1、2年生だ。

原監督は、「どう化けるか分からない。力は十分にあるが、新生青山学院のチャレンジの場。学生三大駅伝、初戦を大化けして優勝を目指したい」と作戦名に込めた意味を話した。

今年の出雲は、例年以上の大混戦が予想される。

早稲田大学は、キャプテン・山口智規が今季、日本インカレ1500m、5000mで日本人初の2冠を達成し、3年生の工藤慎作も国内外のハーフマラソンを制している。また、中央大学は出場大学の中で5000mと10000mの平均タイムがトップと、日本屈指のスピード力を誇る。そして、前回の出雲駅伝を制した國學院大學は、優勝メンバーが多く残っているため、今年も目が離せない。

今大会は、各地区の学連が選抜する20チームに加えて、アメリカ・IVYリーグ選抜と、オープン参加の中国四国学連選抜を含めた計22チームが参加する。

13日(月・祝)午後1時5分の号砲とともに、戦いの幕が上がる。

<「第37回出雲全日本大学選抜駅伝競走」 10月13日(月・祝)午後1時~ フジテレビ系列にて全国生放送>