香港の大規模火災について、元東京消防庁特別救助隊の田中章さんとお伝えします。
――鎮火の見通しは?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
外壁の工事用シートから非常に大きく燃え上がりましたが、それによって建物の内部に火が入った可能性があるので、消火には少し時間がかかると思います。
――救助活動はどのように進めていくか?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
消えた建物もそうですが、建物の中に消防隊が進入してひと部屋ひと部屋をくまなく捜索活動していくことになります。
なぜここまで延焼が広がってしまったかみていきます。
まず火災が発生したのが、日本時間26日午後4時前でした。
香港の中心地から約15km離れた場所です。
火元となったのが築40年以上の32階建ての高層住宅の団地で全部で8棟あり、合わせて2000戸約4000人が住んでいました。
海外メディアによると住民の多くは年金受給者で、約36%が65歳以上の高齢者だということです。
そして最初に出火したのが一番手前側の建物だと報じられていて、その後、火が右の建物、そして左の建物へと燃え移っていったということです。
26日の夜の現場の様子を見ると、ほとんどの建物に火が燃え移っていることが分かります。
8棟のうち7棟に火が燃え移ったということでした。
――「竹の足場」は燃えやすい?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
竹は非常に軽量で安価で、こういうところで使いやすいメリットもあると思いますが、日本では考えられないですね。燃えやすかったと思いますし、非常に油も含んでいて、特に乾燥していると竹も燃えますが、外についていた工事用シートも燃えやすいものがついていたと思います。
香港当局の発表によりますと、改修工事を担当していた業者の取締役3人を過失致死の疑いで逮捕したということです。
そして、外壁を覆っていた防護ネットが、実は防火基準を満たしていなかったことが分かりました。
さらに、エレベーターホールの窓の外側が可燃性の発泡スチロールで覆われていたということで、火災が急速に拡大した可能性があると指摘しています。
――延焼の主な要因は?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
垂直にそびえたっている工事用のシートが、一番建物全体に炎が包まれた原因かなと思います。工事用シートから建物の中に炎が入っていき、これだけの火災になったと思います。
――仮に防火基準を満たしていたら広がらなかった可能性がある?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
日本において、工事用シートは防炎シートが消防法で決まっています。また、足場は竹材が使えず、鉄製のパイプを使っています。建物の基準も非常に耐火性能が高いもの、燃えにくいようなものでできています。また、消防用設備の設置も厳しくなっています。
日本の高層マンションは大丈夫なのかという心配も起きますが、田中さんの見解は「日本で火災が発生しても今回のように火は燃え移らないだろう」ということです。
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
特にこういった高層マンション、31メートルを超えるものは、非常に建物構造自体を強く燃えにくいものにしなさい、避難設備も階段もしっかりとした階段をつけなさい、消火設備もしっかりとしたものをつけなさいと日本では決まっています。スプリンクラー設備と、消防隊が外から水を送り出すような連結送水管も義務付けられています。
――高層マンションで火災が起きたらどうすればいい?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
今自分のいる場所で、必ず2方向に逃げる仕組みができています。避難口誘導灯という青いランプがついていますが、必ずそれが左右どこか2カ所にあります。なので、どちらか一方がふさがれても逃げられるようになっています。また、旅行に行った時には必ず避難口を確認しておくことが必要です。
――煙の中にいても逃げられる?
元東京消防庁特別救助隊・田中章さん:
煙が発生すると全然見えなくなりますし暑いです。逃げる時には姿勢を低くして、ハンカチなどで口をふさいで壁伝いに逃げることが基本です。