10月13日(月・祝)午後1時5分。
島根県出雲市を舞台に、学生三大駅伝の開幕戦「出雲駅伝」がスタートを迎える。
全6区間、45.1km—
チームの走力・戦略はもちろんだが、今年は「天気」も勝敗を大きく左右しそうだ。

筆者である私、寺西は、気象予報士でフルマラソンを走るランナー。
今回、2024年大会優勝校・國學院大學の前田康弘監督に「駅伝✕気象」をテーマに取材した。
「暑さは采配の5割以上、30℃なら9割」
前田監督は気象情報を誰よりも気にする指導者の一人。取材は、次の印象的な言葉から始まった。
質問)出雲駅伝で勝つためにお天気で何を気にしていますか?
前田監督)2つですね。「暑さ」と「風」が勝負の展開を分けます。

監督は1週間以上前から天気予報を追いかけ、細かな変化まで見逃さない。「急に変わるのは勘弁してほしい」と苦笑しながらも、気象データを“戦術の一部”として読み込んでいる。
前田監督)「暑さは区間配置の采配の5割以上を占めている。もし30℃近くまで上がるようなら、9割位占めます」
その上で、「どのチームにも暑さに強い選手・苦手な選手がいる。迷ったら暑さに強い選手を投入しないとチームの力を出せない。駅伝は1区間でもブレーキがあると終わってしまう」と語る。
出雲駅伝は全6区間、45.1km。他の三大駅伝「箱根」や「全日本」と比べると距離が短く、わずか1区間のブレーキが致命傷になる。
前田監督の言葉から天気が駅伝に与える影響の大きさが分かる。
今年はいつもより“蒸し暑い”予想
10日(金)午後2時時点の予報では、レース中の出雲市は最高気温27℃、湿度70%。
気温は平年より高めで、湿度は雨の年を除くと過去20年で最も高いレベルだ。
スタート時、過去一番暑かったのは2021年で気温30.5℃だったが、湿度は47%だった。
この“蒸し暑さ”にどう向き合うかがポイントとなりそうだ。
カギ握る“風”と“風向き”
他の学生三大駅伝『全日本』『箱根』と違い、出雲駅伝の舞台は周回コース。
そのため、前半区間と後半区間で「向かい風」と「追い風」が逆転する。
風向きによってレース展開が大きく変わるのが特徴だ。
今年の出雲駅伝は強い風が吹きそうだ。スタート時、風速は4メートルの予想(10日午後2時時点)。過去20年で最も強い風となりそうだ。
この強い風をどう生かすかもレースのみどころになる。
前田監督も「風が強いなら、意識するところは風に強い対応力のある選手を置くのがポイントになる」と話していた。
今年は東からの風が予想されているため、前半区間が「向かい風」、後半が「追い風」ベースになる。開けた場所を走る4区・5区は、特にこの「追い風」の影響が大きそうだ。スピードには乗りやすいが、気温がピークを迎える時間帯でもある。スピードと体力の両方を見極めつつ、難しいコンディションで走る選手の対応力に注目だ。
“天気を制するものが、レースを制す”
気温27℃、湿度70%、東からの4メートルの風の予想。厳しいコンディションの中、各大学、どんなレースを見せてくれるだろうか。
今年の出雲は、“天気との勝負”からも目が離せない。
【執筆:フジテレビ気象センター・寺西未有】