10月8日から福井県内の最低賃金が改正され、初めて1000円を突破した。その額は、過去最高となる1053円に引き上げられた。アルバイトなどの“働く側”からは喜びの声が上がる一方で、企業側には人件費の負担が重くのしかかっている。
人件費が年間2000万円アップ
最低賃金が改定となる10月8日、福井市内の居酒屋を訪ねると、アルバイトの従業員が夜の営業に向けて仕込み作業を行っていた。
この居酒屋を経営する「ぼんたグループ」は市内に16店舗を構え、200人以上のアルバイトを雇用している。
最低賃金引き上げの影響について齋藤敏幸社長は「最低賃金が上がるたびに、会社では社員とアルバイトで年間2000万円人件費が増えている」と苦悩を口にする。

このグループでは既に最低賃金を上回る時給でアルバイトの募集をかけているものの、更に高い給料を提示しないと人は集まらないという。
増える人件費への対応は「一つのことでは解決できない」とするが「一番の優先はDXをして省人化すること」と齋藤社長。

「業績に影響する」企業が半数
アルバイトを多く抱える飲食業は賃上げの影響が特に大きいと見られているが、ほかの業種にも影響が出ている。
福井商工会議所の調査によると、最低賃金引き上げが「業績に影響する」と答えた企業は49.9%で約半数にのぼる。
県中小企業家同友会の代表理事を務める山内喜代美さんは、中小企業特有の影響があると話す。「中小企業は人件費の割合が非常に高いので最低賃金が上がることで、会社に与える影響が大企業よりはるかに大きい」

福井県内で特に多い製造業は価格転嫁にも課題があるという。「最低賃金が上がって給料体制を見直しても価格転嫁がすぐに追いつく訳ではない。早くても半年先くらい。その間は企業の持ち出しになる」(山内さん)
そうした中、政府は2020年代に最低賃金の全国平均を1500円まで引き上げることを掲げている。

ぼんたグループの齋藤社長は、これからも続く賃上げの影響を「間違いなく淘汰される。5年後には(店は)2~3割は確実に減っている」と厳しい表情で語る。
中小企業は今、生き残るための難しい舵取りを迫られている。