“関西の奥座敷”ともいわれる福井県のあわら温泉に、星野リゾートが進出することになった。かつて歴代の皇族や多くの文化人を迎えながらも景気の低迷で2013年に事業を停止したあわら温泉の旅館「開花亭」の跡地に、宿泊施設が建設される。
かつて昭和天皇が訪れた旅館の跡地に建設
「星野リゾートが、新たにあわら温泉に進出してもらうことが決定しました」
10月8日に福井県庁で開かれた定例会見で、杉本達治知事は、旧開花亭の跡地に星野リゾートが進出することを発表した。
国の内外でリゾート施設を運営する星野リゾートと県は、3年前から宿泊施設の整備に向けた協定を結んでいる。県内ではすでに、県立恐竜博博物館がある勝山市に同社の「リゾナーレ福井」の開業が決まっていて、それに次ぐ2例目となる。

星野リゾートが進出するのは、温泉旅館「開花亭」があった場所で、現在は更地になっている。
「開花亭」は1905年(明治38年)に創業し、昭和天皇をはじめ歴代の皇族や多くの文化人が訪れた事でも知られている。
長くあわら温泉の“顔”として親しまれてきたが、バブル崩壊後の景気低迷やリーマン・ショック、東日本大震災の影響で客足は低迷。2013年に営業を停止した。

長年、更地だった温泉街の中心部に…
温泉地の中心部にありながら、10年以上にわたって更地になっていた「開花亭」の跡地。そこに、星野リゾートの進出が決まったのだ。
知事会見と同日に臨時会見を開いた、あわら市の森之嗣市長。「開花亭が閉館した当時は温泉街にも衝撃が走り、街の人からも残念がる声が多く聞かれた」と振り返り「星野リゾートの進出を公表することができ大変喜ばしく思っている」とした。

地元旅館も歓迎
全国で70以上のホテルや旅館を展開し、洗練されたサービスや地域の魅力を引き出す仕掛けが支持を集める星野リゾート。そのネームバリューは確かなものがある。
埼玉からあわら温泉に観光に来ていた人は「(星野リゾートは)高級な感じ。何回か泊まったことがあるが、どれも良かった。機会があれば泊まりたい」と話す。
地元の人も「何もなかったところだから…よかった」と歓迎。子供連れは「有名だし嬉しい。ファミリー向けだといいな」と話す。
さらに、“ライバル”になるはずの地元の旅館からも歓迎の声が聞かれた。
星野リゾートの建設予定地から徒歩10分程の所にあり、111室の客室を備える「グランディア芳泉」の山口高澄常務は「星野リゾートは全国各地のプロモーションをしているので、共にあわらの掘り起こしをし、世界にあわら温泉を発信したい」と期待を込める。

星野リゾートとの協定で、福井県内第一弾は、県立恐竜博物館がある勝山市の長尾山総合公園内に2027年秋、「リゾナーレ福井」がオープンする。
現時点で、あわらの施設の内容や完成時期などは公表されていないが、星野リゾートは「福井県は多様な魅力にあふれた観光地。あわら温泉の魅力に徹底的にこだわりを発掘し、まだ知らない福井の魅力を伝える体験を提供する」としている。