おいしいコメづくりに欠かせないのが稲の元となる「種もみ」です。
全国有数の産地・砺波市。
6種類の種もみを生産する農業法人の田んぼでは、収穫作業が終盤を迎えていました。
昨今は、暑さに強く収量の多い品種の需要が高まっているといいます。
*泰栄農研 柴田泰利さん
「最近は(暑さに強い)『にじのきらめき』という品種がすごく人気だそう。うちも栽培面積は去年から比べると3倍くらいに広がった」
ただ、食用米と比べて倍以上の手間がかかるという種もみの生産。
徹底した管理が必要です。
刈り取りはもみを傷つけないよう注意を払い、収穫後の乾燥にも2~3倍の時間がかかります。
*泰栄農研 柴田泰利さん
「いちばんは『違う品種が混ざらないように』ということにすごく気を遣う。品種替えのときに機械を掃除。機械自体も種子専用のものを使って、なるべく発芽がしっかりするような体制になっている」
「種もみ王国」と呼ばれる富山。
出荷量は日本一で、流通量の約6割を占め、全国のコメ農家を支えています。
県によりますと、今年県内では、4313トン出荷する計画で作付けされていて、去年と比べて約250トン増える見込みです。
それでも・・・
*県農産食品課 大田幸夫課長
「このあと国の政策や状況もあるが、全体的には(需要は)増加傾向にある」
「通常、多少注文が多くなることも見込んで、多めに生産計画を立てることもあるが、それを上回って要望がある品種もある。だが種子の生産は制約があるので『すぐ増やします』とはいかない事情がある」
全国的なコメの増産傾向や暑さに強い品種への転換もあって需要が高まっている種もみ。
生産拡大は簡単ではありません。
県農業研究所。
種もみのさらに元となる種、「原種」を生産しています。
この時期行われているのは、収穫した種子の色や大きさを細かく選別する作業です。
これらの種子は今後、農協に出荷され、注文状況をもとに、来年産の種もみとして栽培されます。
コメ作りに使われるのはさらにその先、再来年です。
このように生産に手間や時間がかかることや、長期的なコメの需給状況が見通せないことから、急な増産への対応は難しいのです。
農業法人の柴田さんは、新たな仕組みづくりも必要になっていると話します。
*泰栄農研 柴田泰利さん
「増産といわれたときに、すぐに種がないということになるのでストック。いざ必要なときに出していける体制(が必要)。品種もどうしても人気・不人気というのは時代によって変わっていく。柔軟に対応できるような制度設計ができればいいのかなと」
価格高騰や品薄感を背景に需給の混乱が続くコメ。
コメ作りの根幹ともいえる種もみも含めて、生産のあり方全体の見直しが求められています。