県内の最低賃金が8日から70円引き上げられ、1時間当たり1054円と初めて1000円を超えました。働く人や経営者、労使双方にとってどのような影響があるのか取材しました。
金沢駅では石川労働局の職員が最低賃金の引き上げについて知ってもらうと駅の利用者にチラシを配りました。県内の最低賃金はこれまで1時間当たり984円でしたが8日から1054円に引き上げられました。上げ幅は過去最大の70円。パート・アルバイトを含む、県内全ての労働者に適用されます。
町の人は:
「嬉しいです。石川の最低賃金は低かったと思うので、上がってこれからの生活も楽になるかなと思います。増えた分何に使いたい?推しに使いたいです」
「あんまり上がらない方がいい。生活楽な方が賃金よりも物価下がる方がいい」
「もっとあげて欲しいかもしれない。今物価が上がっているでしょみんな生活苦しい苦しいいっているもん。私たちも苦しいよ。少しでも幸せに暮らせるようになってほしい」
石川労働局 八木健一局長:
「昨年と比べ70円の大幅な引き上げとなりました。経営者の皆様方労働者の皆さん方にですねご確認のほどお願いしたいと思います」
一方、県内の経営者は最低賃金の引上げをどう受け止めているのでしょうか?
「おまたせしました。つけめんの大です」
こちらは行列が絶えない人気ラーメン店。ランチタイムには次々と客が訪れ、店内は活気にあふれています。最低賃金の引上げを受け店では給与体系を見直しました。
オーナー寺田さん:
「うちで言ったら研修期間があるんですけど前までは1000円スタートだったんですけど1080円にしたという感じです。他(の店の賃金)が上がってくると、(人材確保の)競争が生まれちゃうので、うちも先を見こしてどんどん上げていかなきゃいけないなと思っています」
引き上げたのは研修期間のアルバイトの時給。研修期間を終えると時給は1300円となります。人材の確保が難しいと言われる飲食業界のなかで賃金を高めに設定することで人手を確保しています。
オーナー寺田さん:
「色々工夫したりしているんですけど、利益は出づらくなっているなと思いますね。全てが高くなっているんで」
人件費だけでなく物価高で材料費も上がっていて本音としては値上げしたいところですがなんとか踏みとどまっているということです。
今回、過去最高の上げ幅となった70円の賃上げを受け県内の経営者などで作る経済団体は危機感を強め県に支援を求める事態となりました。
県商工会議所連合会 安宅建樹会頭:
「本当に我々の実力以上の賃上げを求められているということで会員企業は相当ショックを受けている。今の国の考え方からすると来年80円とか90円ということが当たり前にでてきて本当に払えなくなります」
政府は2020年代に最低賃金の全国平均を1500円まで引き上げるという目標を掲げています。
企業に与える影響について専門家は・・・
金沢大学 齋藤毅講師:
「来年以降も同じ規模あるいはそれ以上の最低賃金のアップが求められてきますので、企業体力のない企業はどんどん淘汰されていく方向になっていく可能性があります」
最低賃金の引上げは社会保険料なども含め人件費全体の底上げにつながると指摘します。最低賃金が被災地、能登にも適用されることについては…。
金沢大学 齋藤毅講師:
「震災の復興プラスアルファ今回の賃上げを乗り切らなきゃいけないということになると、せっかくの復興への取り組みというものがなかなか立ち行かなくなる可能性が高いです」
多くの労働者にとっては嬉しい最低賃金の引き上げですが対応を迫られている人たちも少なくありません。
県は今回の最低賃金の改定に対し賃上げを行った中小企業や地震などで被災した事業者を支援する補助制度を設ける予定です。被災事業者以外で対象となるのは時給ベースで70円以上の賃上げを行った事業者で今月17日からコールセンターや特設サイトを設けて受け付けが始まるということです。