「自分で作れたらうれしいな」次世代につなぐ西条まつりの伝統工芸

今月14日から本格的に始まる西条まつりは、夜間の運行も多く、ちょうちんが屋台を絢爛豪華に彩る。

そんな祭りに欠かせないちょうちん作りを次世代に受け継ごうと、伝統の世界に足を踏み入れた2人の女性職人の姿を追った。

愛媛県西条市福武にある伊予提灯工房で、今年7月に職人見習いになったばかりの谷野宮優梨香さん(33)と、2年目を迎える秋山真美奈さん(36)。2人は元々、工房の主人である日野徹さん(62)が2022年から始めた「ちょうちん作成教室」の生徒だった。

「どうにか次の世代にバトンタッチしたいというのが前々からあって、それで『ちょうちん教室』というものを開いて」と日野さんは教室を始めた理由を語る。

伝統の世界に足を踏み入れた2人の女性職人
伝統の世界に足を踏み入れた2人の女性職人
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まもなくお祭りシーズン本格化

今年で16年目を迎える西条市福武の伊予提灯工房。
出勤してきたのは、今年7月に職人見習いになったばかりの谷野宮優梨香さん33歳と、2年目の秋山真美奈さん36歳だ。

新米ちょうちん職人・谷野宮優梨香さん:
「(提灯づくりは)楽しいですね。時間があっという間に過ぎます」

今年7月に職人見習いになったばかりの谷野宮優梨香さん
今年7月に職人見習いになったばかりの谷野宮優梨香さん

ちょうちん作りは西条まつりに欠かせない伝統工芸

14日に本格的に開幕する西条まつりは“絢爛豪華な宵祭り”としても知られ、ちょうちんの中で揺らめくロウソクの明かりが屋台を照らし出し、観客を幻想的な時代絵巻へと誘う。

ちょうちん作りは西条まつりに欠かせない伝統工芸。作業は分業で、工房の主人日野徹さんと秋山さん、谷野宮さんの2人がちょうちんの本体を作り、妻の美保さんが火袋に文字や図柄を描いていく。

伊予提灯工房・日野徹さん(62):
「教えたことに関しては高いレベルでやってくださってます。生産量はうちでいうと今年は3割ほど増えたかな」

本体を女性二人も作る
本体を女性二人も作る

ふたりとも「ちょうちん作成教室」の生徒

2人は元々日野さんが、2022年から始めた「ちょうちん作成教室」の生徒だった。

日野さん:
「どうにか次の世代にバトンタッチしたいというのが前々からあって、それで『ちょうちん教室』というものを開いて」

秋山さんは、子供がお祭りで着るための小さなダボシャツに、大人と同じ文字などを書き入れていたところ、夫から言われた一言をきっかけに、教室の一期生になったと言う。

秋山真美奈さん:
「これ出来るんなら提灯(の文字)描けるんじゃないと簡単に言われて、不意にそんなこと言われてやってみたいってなって…」

今年5月に生徒となった谷野宮さんも、きっかけは子どもがらみだった。

谷野宮優梨香さん:
「子どもの誕生祝いで、提灯を(作ってもらって)3人分作ってもらったのが家にも飾ってるんですけど、自分で作れたらうれしいなと思って…」

きっかけは子供がらみだった
きっかけは子供がらみだった

70年の歴史を持つ提灯店が廃業

そんななか、同業で70年の歴史を持つ伊藤提灯店が、今年いっぱいで廃業するという一報が飛び込んできた。

西条市内に残る提灯店は、伊予提灯工房と岡本ちょうちん店と2軒だけ。

伊藤提灯店・伊藤基親さん(76):
「体力的にも座りっぱなしでしょ、座りっぱなしなんでちょっと疲れてきたと(文字やデザインを)描くのも、大分遅くなってきたのもあるんです。家内とも相談してやめようかと」

会社勤めから定年を期に家業のちょうちん作りを継いだ伊藤さん。ここ数年は1シーズンに約800個のちょうちんを作っている。毎年、休みは正月だけの過酷な作業スケジュールで、元気なうちに四国八十八カ所を回りたいという夢を叶えるため、廃業を決めたということだ。

伊予提灯工房・日野徹さん:
「西条まつりでいうとどうしてもちょうちんは欠かせないものだと思ってます。(伊藤提灯店の)分はどうにかして、岡本さんなりうちなりでカバーしたいと思ってるんですが、もうあと何年か頑張って、力をつけて、生産数を増やしていって、それを受け入れできる体制にしたいと思っています」

座りっぱなしなんでちょっと疲れてきたと
座りっぱなしなんでちょっと疲れてきたと

失敗は次につながる大事な経験

徐々に作業にも慣れてきた2人の若手職人ですが、新米の谷野宮さんにはまだまだミスが…

日野さん:
「失敗してます。高さを全部弓張提灯なんで、この高さを合わせないかんのんですよ全部」

ちょうちんの取っ手を付けるために開けた穴の高さにばらつきがあったのだ。

日野さん:
「これが前でしょ。こうした時にここをぴったし合わさないかん」

谷野宮さん:
「あ、ずれてたんですね」
(Q.作り直しですか?)「はい」

失敗は次につながる大事な経験。師匠の技術を自分のものにしようと集中する。

日野さん:
「(くぎ曲げは)力がいるんですよ、女性には難しいんですけど。頑張って覚えてもらってるんです」

師匠、今度の出来栄えは?

日野さん:
「これ、気を付けながらやっていただければと思います。はい、これで出来たので次やってください。全部出来てる」

取っ手を付けるために開けた穴の高さにばらつきがあった
取っ手を付けるために開けた穴の高さにばらつきがあった

先輩の秋山さんはすでに実績を積んでいる

先輩の秋山さんは今年、実家のある地区のだんじりのちょうちんを半分以上作るなど、すでに職人としての実績を積んでいる。

秋山真美奈さん:
「これは私がワイヤーから、さし張りから、文字描きから、組み立てすべてやった提灯です。すごいきれいじゃないですか。すごいねすごいねと言われてちょっとこうなりますね(笑)これからずっと学び学び学びです」

日野さん:
「お祭りというのは地元に職人さんがいて、初めて成り立っているところがあると思うんですよ。そういう意味でもちょうちん屋さんがちょうちんを作れないと、お祭りは少しずつ寂しくなっていくので、それができる体制を2人でやっていただきたいと思ってます」

これからずっと学び学び学びです
これからずっと学び学び学びです

新しい提灯職人、2人の目標は?

一人前の提灯職人を目指す秋山さんと谷野宮さん。2人の目標は?

秋山真美奈さん:
「夢は大きく、店舗を持って一人でやっていけるように頑張りたいです」

谷野宮優梨香さん:
「自分の子供が子供生まれて、孫にお祝いちょうちんを作ってと頼まれるのが夢です。ちょっとでもお祭りで、たくさんの(私が作った)ちょうちんを飾っているのが見れたら、力になれたらなと思ってます」

2人が作ったちょうちんが夜のだんじりを照らす西条まつりは、今月14日から本格的に始まり、市内は祭り一色に染まる。

14日から本格的に始まり、市内は祭り一色に染まる
14日から本格的に始まり、市内は祭り一色に染まる
テレビ愛媛
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