仕入れ時に不備を把握していた

販売サイトでは正規ディーラーの取扱車として紹介されていたが、実際に届いた車は車検に通らない状態だった。

販売会社は、このポルシェを2023年に第三者から仕入れた。その時点でキャタライザーが外されていることを確認していたが、販売ページなどでその不備を告知することはなかったという。

販売会社は契約前の説明を主張

男性は車を保管するために駐車場を借り、保険にも加入した。“走れない車”のために毎月費用がかかっていく。納得はできなかった。

男性は契約の取消しと代金の返還を求めた。

法律では、契約のときに重要な事実を知らされていなかった場合、「錯誤」として契約を取り消すことができる。

販売会社は、「契約前に説明した」と主張したが、裁判所は認めなかった。

営業日報にも記録はなく、注文書にも記載はない。納車の場で初めて説明されたことが、証拠から明らかになった。

東京地裁は「原告は、公道を走るために車を購入した」と認定したうえで、「キャタライザーが付いていないことは、契約の前提を覆す重要な事実であり、錯誤にあたる」と判断。販売会社に対し、男性が車を引き渡すことと引き換えに1344万4000円を返還するよう命じた。

男性は「キャタライザーがついていないと知らされ、引き取りを求めたのに強制的に車を引き渡された」などと主張。不法行為に当たるとして損害賠償も求めたが、裁判所は「引き取りを求めた事実は認められない」として、損害賠償については認めなかった。

高額な買い物、求められる誠実さ

待ちに待った納車日、届いたのは“走れば違法になる車”だった。

この事実を知ったときの男性のショックは計り知れない。

車は人生において家に次ぐともいえる高額な買い物だ。買い手が不幸になる事態を防ぐため、売る側にはより丁寧な説明と、誠実な対応が求められている。

プライムオンライン編集部
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