女性が男性に近づき誘惑し、共犯者が現れて金銭などを脅し取る犯罪、いわゆる“美人局(つつもたせ)”による事件が相次いでいます。
大阪で先月30日に5人が逮捕された事件の被害者の母親が取材に応じ、「血だらけで、ふらふらで、抵抗したら絶対に殺されると思って」と被害者が無抵抗で被害にあったことを語りました。
■悪質かつ多様化する“美人局” 夫婦で逮捕され容疑者に
「newsランナー」が独自入手した写真には、幸せそうに微笑む夫婦が写っています。しかし夫婦ともに逮捕され、容疑者となりました。
顔をあげ、まっすぐ前を向く男。強盗致傷などの疑いで逮捕された大屋圭吾容疑者(25)。
大屋容疑者ら5人は、ことし4月、大阪府泉佐野市の公園で20代の男性に暴行を加え、財布などを奪った疑いが持たれています。
彼らが行ったとみられるのが“美人局”。女性が男性に近づき誘惑。その後、共犯者が現れ金銭などを脅し取る手口です。
驚くのは、今回の事件で“美人局”の女性役とされるのが、大屋容疑者の妻・恵里那容疑者(22)。
仲睦じく写る結婚式の様子から一転、若い夫婦らが逮捕されるに至った凶悪な事件とは。
■女性に公園に誘いだされ…突然、男たちに暴行され山に置き去り
【記者リポート】「男性が恵里那容疑者と公園で歩いていたところ、突然トイレの方から、複数の男が現れたということです」
警察によると、恵里那容疑者(22)が被害にあった20代男性とSNSで知り合い、公園に誘い出しました。
深夜の公園で2人きりとなりその後、話しながら歩いていると、突然、複数の男が現れ、男性に「調子乗ってんちゃうぞ」などと言いながら暴行を加えたということです。
男性は鼻を骨折するなどの重傷を負ったうえ、大屋容疑者らに車に乗せられて1時間ほど連れまわされた上、公園から5キロほど離れた山の中にある火葬場に放置されました。
男性はスマートフォンも壊され、深夜の山道を歩くことに。その後、近くの病院に駆け込んで警察に連絡し、事件が発覚しました。
調べに対し大屋容疑者は「また話します」、妻の恵里那容疑者は「うん、そんなことがあったことはあった」と話していて、強盗の疑いについては大屋容疑者は黙秘、恵里那容疑者は否認しているということです。
この事件では三木田寿稀容疑者(22)、松本桐人容疑者(25)、濱海斗容疑者(21)も同様の疑いで逮捕されていて、三木田容疑者と濱容疑者は暴行を加えたことなどは認めているものの、強盗容疑は否認し、松本容疑者は全面的に否認しています。
■「ダムに捨てようか」…被害男性の母が語る“死の恐怖”
女性との出会いから一転、危害を加えられた今回の事件。
被害に遭った男性の母親がきょう(=3日)、初めてテレビ取材に応じ、事件の生々しい状況を話しました。
【被害男性の母】「(息子は)抵抗したら『絶対に殺される』と思って、無抵抗のままで。車に乗る時も『血を付けたら、殺すぞ』と言われて、(犯人たちが)『ダムに捨てようか』という会話をしているから、『もう自分は殺されるんだな』と。その死の恐怖、息子にしか分からないから、どんなに怖かったかなって」
体の傷だけでなく、心にも傷を負わされた被害者。
財布やキーケースも奪われ、“住所が犯人たちに知られているかもしれない”という恐怖は、家族たちをも苦しませています。
【被害男性の母】「私たち家族は、あの事件から、当たり前の日常を奪われた。人の人生を何やと思ってるのか。全く無関係の息子を呼び出して、殴る蹴るの暴行、拉致監禁、強盗、死の恐怖を与えたこと。絶対、一生、許せない」
一方、逮捕された大屋容疑者の父親も取材に答えました。
【大屋圭吾容疑者の父】「逮捕の一報を聞いてびっくりしている。子供もいるのにバカでしょ。事件があった4月から複数回会っているが、変わった様子や相談もなかった。被害者の方にケガをさせてしまい、ただただ申し訳ない」
と、憔悴した様子で話しました。
■“美人局”被害に遭った男性 女性の態度見て「これはグルなのかなって」
広辞苑によると“美人局”は、「中国の元の頃」からあったとされる犯罪。
近年は、インターネットの普及などで手口が広まっていきました。
取材班は、過去に“美人局”の被害に遭ったという男性を取材。
【過去に“美人局”に遭った30代男性】「出会い系サイト、“人妻と出会える”っていううたい文句のサイトで出会いました。『きょうは帰らなくてもいい』って言ったので、どこか泊まろうかと…」
男性は出会って間もなく女性と性的な関係を持ち、ホテルから駅に向かうと…。
【過去に“美人局”に遭った30代男性】「その時間帯にしては不自然な、男性だったんですけど気にせず行こうと思ったら、『おい』と声をかけられて、『自分の妻になんてことをしてくれた。これは犯罪や』と、『警察に行くか、お金を払って穏便に済ませるか選ばしてやる』と」
と夫と名乗る男から200万円請求された男性。
しかし、当時学生で支払えず、身分証を撮影され「逃げるなよ」と脅されたということです。
【過去に“美人局”に遭った30代男性】「ここで人生終わったんやなと…。悪いことしてるのはこっちなんで、ここは穏便に済ませようと思い抵抗せず、胸ぐらつかまれたり、髪の毛つかまれたりしたんですけど、おとなしく耐えて『はい、はい、はい』みたいな…」
(Q.その時女性は?)
【過去に“美人局”に遭った30代男性】「慌てているのかと思ったら、そうでもない感じで、違う方を向いて携帯いじってたので、これはグルなのかなって、その時に感じました」
■“美人局”は身近な犯罪に 低年齢化する傾向
そして被害相談を受ける専門家は、「“美人局”は今、身近な犯罪となり、低年齢化する傾向にある」と指摘します。
【弁護士法人デイライト法律事務所 杉原拓海弁護士】「最近はマッチングアプリやSNSを使っての“美人局”というのが、増加傾向にある。SNS上で若者たちも知り合うきっかけが増えているし、簡単に共犯関係として、“美人局”を一緒に実行しようというケースが増えている」
9月、京都市内では、“美人局”で大学生から現金を脅し取ろうとした疑いで、男2人と女子高校生が逮捕。
また去年、大阪では中学生らが“美人局”をして、脅迫された大学生がビルから転落し死亡しました。
もし被害に遭ってしまった時は…。
【弁護士法人デイライト法律事務所 杉原拓海弁護士】「後ろめたい所があるかもしれないが、命に関わるケースもあるので、すぐにしかるべく所に通報することが一番大事」
■結婚相手との出会いは「マッチングアプリ」が28.8% 「SNSはそもそも危険と理解して活用して」京大・藤井教授
こども家庭庁の2024年の調査によると、結婚相手との出会いのきっかけはマッチングアプリが28.8%と最多で、職場・仕事関係の20.5%を上回っています。
“美人局”被害に遭わないためにはどうしたらいいのか。デイライト法律事務所の杉原拓海弁護士に聞きしました。
・(マッチングアプリなどで知り合った後は)会う前にビデオ通話の提案をする。
・初めて会うときは2人きりにならずオープンな場所で。
【京都大学大学院 藤井聡教授】「社会というものがしっかりとしていると、マッチングアプリなんてなくて、(SNS以外の)いろんな出会いがあって、それぞれの人生が社会の中で営めると思う。
現在は社会の構造自体がすごく弱体化してきていて、SNSはすごく大事になっている。職場とか友達の紹介とかだったら信頼できますよね、ある意味。
SNSはそれがないので、『そもそも危険』ということは理解した上で、上手に活用いただかないとこういうリスクが起こってしまうんだろうなと思いました」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月3日放送)