福井県内の魅力を再発見する小旅のコーナーでは、越前市にあるかわいらしい石像たちがずらりと並ぶ寺を紹介します。この場所には、住職のある思いが込められていました。
越前市高瀬にある宝円寺。寺とはいえ、少し派手なたたずまいに驚かされます。
門をくぐり、本堂へと向かうと、出迎えてくれたのはたくさんのカエルの石像。こちらにも、あちらにも、カエル、カエル、カエル。
その表情はどれもやさしく、見ているだけでほっとします。
このカエルたちは、住職が亡くなった人の供養のため奉納してきました。“あの世に無事カエル”。そんな思いを込めた、小さな祈りのかたちです。
そして目を引くのが、童の石像。カエルの石像と同じように数多く並んでいます。
表情豊かで個性たっぷりなしぐさに、思わず顔がほころびます。
宝円寺は1388年、南北朝時代にできたと伝わる古い寺で、加賀藩初代藩主・前田利家が越前府中に居城したころに保護した寺院で、菩提所としました。
そんな歴史ある寺が、なぜ今こんなにも“かわいい寺”になったのか―
住職はこう語ります―
「今はお寺から人が離れつつある。だからこそ、子供たちにまずは気軽に来てもらいたい」
長く地域とともに歩んできた寺だからこそ、今の若い世代にも身近に感じてもらえるようにと工夫を続けています。
カエルや愛らしい表情の子供の石像は、住職の「寺をもっと開かれた場所にしたい」という思いから生まれたもの。
その思いが少しずつ広がり、訪れた人の心にも優しく届いています。