今、関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。10月から全国で最低賃金の大幅アップが順次、行われるなど改めて労働環境への関心が高まっています。実は10月から子育て世代の働き方のルールも変わります。どのような変更なのか。担当は森岡記者です。
(森岡紗衣記者)
「国のルール変更によって、子育て世代が家庭と仕事を両立しやすいよう、事業者が柔軟な働き方を整えることが義務化されました。具体的にどう変わるのか。まずは仕事と両立する子育て世帯の実態を取材しました」
◆子育ては予想できないことも…仕事との両立をはかる保護者は「もう少し育休を取りやすくしてほしい」
岡山市北区にある保育所です。午後5時ごろ、仕事を終えた保護者が次々と子供たちを迎えにきていました。
(仕事終わりの保護者)
「仕事終わりです。午前10時から午後4時45分までの時短勤務です。仕事終わって帰ってからの時間があっという間に過ぎる。買い物行ってご飯作って風呂をして毎日せわしない感じがする」
息つく時間もないほど生活に追われています。さらに子育ては予想できないことも多くあります。
(仕事終わりの保護者)
「働いている時に(子供が)熱を出した時、母親の私が急きょ休みを取ることになるので、仕事によって難しいのは承知だが休みを男性も取れたら」
「今はリモートワークがうまく使えるようになってきて(育児に)貢献はできていると思うがもう少し育休を取りやすくしてほしい」
◆10月1日施行「柔軟な働き方を実現するための措置」はどんな制度?
こうした状況を改善しようと、法律が改正されました。国の出先機関、岡山労働局で聞きました。
Q:制度はどう変わる?
(岡山労働局 島田菜々美さん)
「3歳~小学校就学前の子供を養育する労働者に関して事業者は5つの中から2つ以上の制度を選択して整備する必要がある」
その5つの制度が、
〇始業時刻などの変更
〇テレワーク(10日/月)
〇保育施設の設置運営など
〇養育両立支援休暇の付与(10日/年)
〇短時間勤務制度労働者を雇用する
事業者は少なくともこのうち2つを取り組む必要があります。
◆法改正に至った背景と注目点
一方、3歳から小学校就学前の子供がいる労働者は、2つのうち1つを選んで利用することができるとしました。これはパートタイムで働く人も対象となっています。
(岡山労働局 島田菜々美さん)
「注目されるものとしてはテレワーク。コロナをきっかけに家で仕事ができるよう取り組む会社もありそれが今回の法改正に含まれている」
Q:これまではどんなことが課題だった?
(岡山労働局 島田菜々美さん)
「これまで3歳を超えて利用できる制度としては看護休暇や時間外労働の制限、深夜業の制限などがあった。ただし、保育園の送迎や急な呼び出しなどがあって利用できる制度としては不十分だった」
◆「子育てする人」だけの制度にならないよう平等に…「労働者側の意見聴取」機会を
制度の不備を埋め、子育てとキャリア形成の両立が期待される一方、ルール変更に対応することだけが目的にならないよう注意が必要です。
(岡山労働局 島田菜々美さん)
「措置を選択する前に過半数組合などの労働者側から意見の聴取の機会、ニーズ調査をする必要がある。一方的に事業主が決めてしまうのではなく、労働者の意見も必ず聞いてもらい、そこで内部でどうするかの調整をしてもらうことは忘れないようにしてほしい」
Q:逆にこの制度が導入されることによって、子育てをする人以外の負担が増えるのではという懸念もあるかもしれないが、どのようなサポートが必要?
(岡山労働局 島田菜々美さん)
「規模の小さい会社では制度の導入や体制整備をする上での業務的な負担もかなり発生してくると思う。育児で休む人だけではなくてそれ以外で休まなければならない理由ができた時も会社としては平等に対応していくというメッセージを送ってもらうことが気持ちの面でも共通してお互い様という意識が持てるのでは」
◆子育て世代“以外”の労働者の負担軽減も必要
子育て世代の課題解決に向けて大きく前進しました。ただ、子育て世代以外の労働者の負担軽減も必要なのが分かります。
例えば、育休で短時間勤務をする社員の一部の業務を任されることになった別の社員には特別手当を支給するという会社もあるそうです。また介護や病気の治療など子育て以外にも様々な事情がある労働者がいます。そうした人たちが安心して働き続けられる環境を整えることも重要です。
ただ見方を変えると、事業者にとっては、変更された制度を活用し時代にフィットした職場環境をつくることで優秀な人材を集めるチャンスでもあります。