同じ病院で同じ時期にがんと闘った若者たちが「今度は支える側になりたい」と同じ病気に苦しむ子どもや若い世代の支援を始めました。ドリンクを販売して収益を寄付する〈レモネードスタンド活動〉に密着しました。

「がんと闘う子どもたちのためにぜひ1杯、よろしくお願いしま~す」

5月、熊本市中央区の上通アーケードにその声が響いていました。菊池郡大津町に住む鍼灸師・古庄 亮二さんです。レモネードの購入を呼びかけていました。

レモネードを販売し、その収益で、がんで苦しむ子どもや若い世代を支援する取り組みです。〈レモネードスタンド活動〉と呼ばれ、アメリカから広まったといわれています。

古庄さんは2020年7月に水頭症と診断されて手術を受けました。その後、がんが見つかり、熊本大学病院で約1年半の闘病生活を送りました。小学2年生から続けていた空手を諦めかけたこともありました。

【古庄 亮二さん】
「闘病後1年ぐらい、人と話したりするのが怖くなりました。外に出るのも怖くて、誰かと一緒じゃないと不安になったりすることがありました」

そんな古庄さんを支えたのは家族や友人、そして、同じ時期に熊本大学病院で闘病生活を送った仲間でした。去年10月、5年ぶりに空手の大会に出場した際、そのうちの一人、薬剤師の畑中聡一郎)さんが応援に駆け付けました。

【畑中 聡一郎さん】
「たまたま同じ時期に同じ病気で入院していて、同じ治療を受けていて、治療もコロナの時期で本当につらかったです。外に出られなくて、誰とも面会とかできなくて、その中で同じような境遇の彼がいてくれたから、僕も治療を頑張れました」

古庄さんと畑中さんにはほかにも、闘病生活を共にした仲間がいます。

保育士の梶野 桃香さんです。17歳のときに腫瘍が見つかり、手術を繰り返してきました。

ことし1月に集まり、今度は支える側に回ろうと『レモネードスタンド』に取り組むことを決めました。

SNSなどでも呼びかけ、この日、多くの人がレモネードを購入していました。

【レモネードの購入客】
「インスタを見て来ました。〈もっといろいろな人に知ってほしいな〉と思います」
「レモネードもおいしいし、みなさん明るくて〈頑張っていて、いいな〉と思いました」

【梶野 桃香さん】
「みなさんみたいに活動は全然できていなかったんですが、今回、みんなに影響されてやってみて、本当によかったと思います」

【古庄 亮二さん】
「5年前では、こういうことをするとは考えてもいませんでしたし、またみんなでこういう形で集まることができたことも幸せですし、みんなで楽しくイベント活動できて、私は本当に幸せだと思います」

【畑中 聡一郎さん】
「若い世代同士のつながりが薄くて、〈この活動を見てもらってそういう人たちの力になれれば〉と思います。励みになれればうれしいです」

今回、活動に参加したのは患者自身とその家族など計約10人。

その中に、7歳の豊澤 恵(けい)くんの姿がありました。2020年に脳腫瘍が見つかり、手術を受けました。

2日後に10回目の脳腫瘍の摘出手術を控えていました。

【恵くんの父・健志(たけし)さん】
「すごく意味があるなと思っていますので、またこういう機会があればぜひ参加したいと思います」

恵くんの両親はSNSで恵くんの病状や日々、思うことなどを発信しています。

【恵くんの母・麻衣さん】
「最初はやっぱり、みんなに見てもらうようにはできなかったんですけど、自分の子供が病気になった時に情報がなくて、そういう時に同じような脳腫瘍の子たちのお母さんたちがいろいろな情報を載せてくれて、それで私もすごくそれを見て助けられて、今度は自分がいろんなお母さんたちの助けになるようにSNSで発信して、こういう病気があって、こうやって闘っている子がいるのを見てもらうことで、〈ちょっとでもいろいろな人を勇気づけられたらいいな〉と思って発信し始めました」

この日は、恵くんを支える病院の医師や看護師も訪れ、SNSを見て、長崎から駆けつけた人もいたといいます。

【恵くんを担当していた看護師】
「恵くんのお母さんから〈何かやりたい〉という話は聞いていたので、〈それが実現できて、とてもうれしい〉というのと、〈自分も何か力になれれば〉と思って、今回来ました」
「退院したあとに、こうやって活動するところを見ることができて、感慨深いです」
「私たちも勇気をもらえて、胸がいっぱいになります」

【恵くんの母・麻衣さん】
「手術に向けての勇気になって〈また頑張って帰ってこよう〉という気持ちになりました」

恵くんに手紙を書いている女性がいました。

【木野 紗彩さん】
「3歳の頃から同じ病気をして、家族やいろいろな人に支えてもらって、私もこれからいろいろな人を支えていきたいなと思ったからです」

(恵くんに手紙を渡す)

【木野 紗彩さん】
「今、病気になっている人や頑張っている人にも元気になってもらいたいです」

つらい闘病生活をともにして励まし合ってきた仲間たちということで、強い信頼で結ばれているようです。

今回はレモネードが264杯販売され、収益は約11万6000円あって、すべて支援のための関係団体に寄付されたそうです。

テレビ熊本
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