トラブルや苦情などが相次ぎ、規制の強化を求める声が高まっている特区民泊。

大阪市は、迷惑民泊を根絶するチームを創設するほか、新規の申請の受け付けを停止する方針を決めました。

【大阪市・横山英幸市長】「新規申請の受け付けについては停止というふうに判断したい」

30日、大阪市で開かれたのは、「特区民泊」の課題を洗い出すためのプロジェクトチーム会議。

決まったのは特区民泊の新規受付の一時停止などです。

■「ホテルより快適!」万博の訪日観光客の受け皿に

国家戦略特区に指定された地域で認められる「特区民泊」。

通常の民泊は営業が年間180日までに限られるのに対し、「特区民泊」は日数の制限がありません。

また、全国の「特区民泊」のおよそ9割が大阪市内に集中。

万博の開催で増えている外国人観光客などの受け皿になっています。

【フランスからの観光客】「ホテルの半額くらい。グループで一緒に泊まりたかったからホテルより民泊にしました」

【中国からの観光客】(Qホテルより快適ですか?)「はい!」


■苦情件数399件 騒音やゴミ出しめぐり周辺住民とトラブル増加

一方で課題も…

宿泊客の騒音やゴミ出しをめぐって周辺住民とのトラブルも増えていて、昨年度に寄せられた苦情件数は399件に上っています。

これまで苦情があっても法律に具体的な規定がなく処分ができない状況だった特区民泊。

これを受けて大阪市は、国と協議の上、制度を変更する必要があるなどとして、事業者や個人からの新たな申請の受け付けを一時的に停止することを決めたのです。


■駆け込み申請急増で『特区民泊』ますます増加か

こうした規制強化の動きを見越して、駆け込みでの申請が増加する事態も…

【記者リポート】「大阪市の保健所の窓口には、特区民泊の申請を駆け込みでする人たちが訪れています」

新規受付が停止されるまでは「特区民泊」がさらに増えつづけるという状況にもなっているのです。

【特区民泊の申請に来た人】「今回で6軒目。(申請の)予約が多くて、電話しても2か月後とかなので急ぎで来ました」


■「迷惑民泊根絶チーム」創設へ 今後は住宅街を除外か

新規受付の停止日はまだ決まっていませんが、ことし11月に国と協議したのち、周知期間も設けられます。

また、受付を再開した場合には、住宅街を除外する可能性もあるということです。

30日の会議で大阪市の横山市長は、11月から仮称「迷惑民泊根絶チーム」を創設すると発表。

トラブルに対応しないといった問題が見られる民泊は、認定を取り消すなどの措置も検討する方針です。


■「安心して海外の方を迎え入れられる状況を目指す」と横山市長

【大阪市・横山英幸市長】「多くの人が大阪に来て泊まって楽しんで消費をして税収として入ってくる。一方で住民の皆さんの不安や心配も大きい。安心して海外の方を迎え入れられる状況を目指して、今はその過渡期だと思いますので、その途中の判断ということです」

増え続ける「特区民泊」。

地域住民と共存できる新たな制度の構築が急がれます。

■専門家「駆け込み申請が増えるので早い指導・処分の基準づくりが重要」

大阪市の特区民泊への対応についてまとめます。

1.「迷惑民泊根絶チーム(仮)」を保健所に新設。

問題がある特区民泊には早急な対策が必要ということで、騒音、ごみ出しといった苦情の分析・防止、そして違反業者への徹底した行政指導などを行うということです。

2.「特区法の改正」を国へ要望
・各自治体の独自規制を可能にすること。
・海外事業者に国内代行業者の委託を義務付け。
など

こうした対応に対して、民泊に詳しい阪南大の松村嘉久教授は「新規の受け付けを停止する動きに伴って、駆け込み申請が増えるので、早い指導・処分の基準づくりが重要。そこが甘いとまた同じトラブルが起きてしまう」と話しています。

■元AERA編集長「根本的に特区民泊の見直しが必要ではないか」

こうした対策について、元AERA編集長でジャーナリストの浜田敬子さんは、「根本的に特区民泊の見直しが必要ではないか」と話します。

【元AERA編集長 ジャーナリスト 浜田敬子さん】「今問題になっている“オーバーツーリズム”の問題は、ある地域に観光客が集中することで起きてしまいます。この特区民泊は民泊を特区にしたことで、特区内に民泊が集中しています。

さらに業者の人は大規模な物件とかを建てています。それによって普通の民泊よりも地域住民とのトラブルや家賃の上昇が生じます。さらに付近ではホテル経営も厳しくなります。『ホテルより安いから』って民泊選んでいるじゃないですか。特区にしたことで問題が集積してしまったんじゃないかと感じました。

新規の受け付けを停止しただけで、この問題が根本的に解決できるのだろうか、と思います。根本的に特区民泊を見直すための議論、“集中しすぎる”ということに対して地域への配慮を本質的に議論しければならないと思います」

(関西テレビ「newsランナー」2025年9月30日放送)

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