特集です。長引く物価高騰は学校の給食にも影響が及んでいます。
<福岡の問題化した給食写真>(唐揚げが1個)
こちらの写真は今年4月、福岡県の学校で提供された給食です。
唐揚げが皿に一個しかないこちらの写真が話題になったことは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
物価高騰が教育現場にも影響を及ぼす中広島市内の小学校の給食はかろうじて一食およそ300円を維持しています。
子供たちのために栄養と食の楽しみを両立させようと奮闘する栄養士たちの姿がありました。
【栄養士】
「牛肉です。高いですね」
「価格とかも、今色々ものが値上がりしていまして」
頭を抱えているのは広島市の公立小中学校の給食メニューを考案する栄養士たち。
共通する悩みは物価高騰による食材の値上がりです。
子供たちの成長にとって大切な給食にも大きな影響を及ぼしています。
この日は、来年度以降に提供する給食のメニューについて話し合います。
広島市内の栄養士、およそ70人が集まり新しい献立や、味つけ、そして、調理法などを確認します。
アレルギ―がある子どものための給食を考案するのはもちろん、最近の気温上昇も給食に大きく影響しています。
冷ます過程で菌が繁殖してしまうため「あえ物」の提供が難しくなるなど、安全に配慮するための制限が増えています。
そして、今向き合わなければならないのが高騰する食材です。
【栄養士】
「だいたい、(赤ワインを)1人1グラムか2グラム使っていたのを、0にして、そこでちょっとお金を捻出したりしていますね」
「色味をきれいにするとなると、ネギであったりニラであったり、結構高価なものが入るので、価格との兼ね合いで考えながら、なんとか子供たちが喜ぶものを出せたらなという感じで作っております」
広島市の給食費は国による補助金制度などを利用しているため、保護者の直接的な負担はまだありませんが、子どもたちに配膳される給食には影響が徐々に出ています。
【己斐小学校 石井美穂 栄養教諭】
「栄養価もしっかりとれて、おいしくって、子供にわくわくしてほしいので、ちょっとそこも取り入れながら頑張りたいんですけど、デザートとかの回数が減っているので、ちょっと厳しいなという感じです」
実際、広島市で提供された献立を6年前と比較すると、赤色で囲ってあるデザートでみてみると以前は4回出ていましたが、今年は半分の2回に減っています。
さらに、同じメニューのフルーツポンチを詳しく見ると中に入っている「黄桃」が今年はなくなっています。
しかし、ただ量を減らしてばかりいては、満足度や栄養価に支障が出てしまう…子供たちのために、現場の栄養士たちは工夫を続けています。
<会議の様子>
【栄養士】
「むね肉だったら15.28円、国産のもも肉だったら19.9円で、たぶん輸入にしないといけないので輸入だったら28.73円。10円以上 上がっちゃう」
肉の種類や部位を変え予算、栄養、重さのバランスや、見ばえ、おいしさ、食べやすさを考えひたすら数字と向き合います。
<会議の様子>
【栄養士】
「価格が。冷凍生揚げのほうがさつま揚げより安い。冷凍生揚げ15にしたら、エネルギーが8ぐらい増えて、価格が0.8円くらい下がるので、ウエイトも4あがる」
栄養士たちは食材費を節約するとともに目指しているのはおいしく、楽しい給食です。
安い食材を探すだけでなく、調理法という栄養士ならではの視点からひと手間を加えます。
【口田東小学校 山中浩美 栄養教諭】
「うまみの少ない汁物であったときなんかは、野菜をしっかり炒めて、野菜の甘みもしっかり出るようにしています。だしの量も元々のものより少し減らしているので、鰹節を入れるタイミングを少し早くしたりとか、しっかり強く煮出すと味もしっかり出るのでおいしさが変わらないように提供しています」
まさに、縁の下の力持ち。
物価高騰という悩ましい状況でも、栄養士たちの地道な奮闘が子供たちの楽しい給食の時間をささえています。
【小学3年生】
「おいしいです」
(Q:好きな献立は?)
「まあ唐揚げかな」
「おいしい」
(Q:好きな献立は?)
「小おかず、野菜が大好き」
(Q:給食大好きな人)
「はい!(ほとんどの児童が挙手)」
【口田東小学校 山中浩美 先生】
「限られた予算の中で、子供たちの成長につながるような給食のメニューをこれからも出し続けていきたいなと思っているので、やはり考えるときには子供たちの栄養、それから楽しみといったところをすごく大切にしてあげたいなと思っています」
栄養士だからできることは、何か。
子供たちの楽しい、おいしい給食を守るための奮闘がきょうも続いています。
<スタジオ>
さてここからは「解説・カイセツ」で詳しく見ていきます。あらためて特集で取り上げた広島市の一食あたりの給食費の推移です。
年々、食材費は右肩上がりとなっていますが保護者の負担分は、一食250円はかわりません。オーバーした分は国や広島市などの補助金で賄っているのが現状です。
<大竹・安芸太田・神石>
さらに大竹市では行政の補助によって小学校も中学校も給食は無償で提供されます。また、安芸太田町では地元・安芸太田町産のお米を使うことで、給食費の価格を抑えているということです。
さらに、神石高原町では、「神石高原ランチ」の日を設けていて、神石高原和牛やニューピオーネといった神石高原町で作られた食材だけを使用した給食を提供しています。
物価高に対応しながら、地産地消を学んでいるということです。
取材した片平記者の取材メモによりますと、予算が厳しいからといって量を減らしたり、安いものに変えるというだけでなく、調理法で味のクオリティを保つという栄養士ならではの工夫を感じた。さらに、時代とともに給食のメニューは変化していて、最近は給食にも国際色豊かな献立が登場していて、食を通じて異文化理解の促進を図る目的があるということですが、
新川さんそうは言っても一方でなかなかこのあらゆるものの値段が上がってる中で給食だけが果たしてその内容を維持できるか、その価格を変えずに維持できるかっていうのは、様々な議論がありますね。
【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
栄養士さんの努力にはもちろん敬意を表するんですけれども、お1人お1人の努力を美談に変えてはいけないと思うんですよね。子供たち1人1人にタブレットを配る予算はあって、どうして1食300円を上げることができないのか。教育費っていうのが誰のために本当に使われるのかっていうのを、こういった先生たちの努力にしわ寄せをするんではなくて、ちゃんとメスを入れていかないと。子供の数は減ってるわけですから、物価は高騰していても、根本的なところを見直さないといけないんじゃないかなと思います。