カツオのまち気仙沼で、29年連続の水揚げ量日本一に黄色信号が灯っています。

9月22日の気仙沼漁港。例年であれば脂が乗った「戻りガツオ」の水揚げが本格化し、200トンを超える日も珍しくないのですが…

この日、9隻の漁船から水揚げされたカツオは合わせて85トン。
市場にはいつもの活気はありません。

カツオ漁船の漁労長
「少ないです、サイズも小さい。今年は大きいカツオは見込めないかも」

量の少なさに加え、関係者が頭を悩ませているのが…

記者リポート
「カツオが次々と水揚げされていますが、今年はこのようないわゆる大きいカツオの姿がほとんどなく、小型のカツオが中心となっています」

飲食店などから引き合いの強い2キロから3キロほどのカツオがほとんど取れず、この日も全体の8割が1キロ台かそれ以下の小さいサイズのカツオでした。

漁労長
Qこのカツオで何キロくらい?
「1.2~1.3キロ」
Q例年だったら?
「2.5キロから3キロあるよ、例年だったら。脂もそんなに乗ってないなんでなんかな~」

水揚げされた魚を見極め、小売店や飲食店に卸す仲買人の間では、大きいカツオをめぐって”争奪戦”が起こっています。

カネト佐々東・佐々木利重社長
「我々が買うような3キロ以上のカツオは本当に数匹しかいない。少なければやっぱり浜値が高騰しますから結局奪い合いになるので、例えば今まで1000円で買えたものが結局3000円になっちゃうわけです」

カツオが看板メニューの飲食店です。
今年は、中型から大型の質の良いカツオを安定して仕入れるのが難しいといいます。

和醸酒一杯屋梟 店主 小野寺洋さん
「カツオのまち、気仙沼で店を張っている以上は一番良いカツオを使うというのは心に無いと、お客さんに『どうですか』ってできないじゃん。だから毎朝大変、毎朝勝負」

カツオの仕入れ値が例年の3倍ほどに上がる中、提供価格も苦肉の策でおよそ1.5倍に値上げしました。
それ以上に今は、「自信を持って出せるカツオ」がないことが悔しいと話します。

和醸酒一杯屋梟 店主 小野寺洋さん
「赤身でしょ、これだけ立派なカツオでもこうなんだよ。この時期だとだいたい脂が乗ってきて、これぞだよっていうのが気仙沼のカツオだけど。この時期でこのカツオをさばかないといけないというがっかり感はないよね」

去年、同じ店で取材した時の映像を見ると、藁の火であぶると脂がしたたり落ちていましたが、今年はほとんど脂が出てきません。

和醸酒一杯屋梟 店主 小野寺洋さん
「『ザ・これが気仙沼のカツオです、どうだ、食え』っていう『食ってみろ~』みたいな感じの押しの強さができなくて。お客さんに申し訳ない気持ちもあるけど、それはそれとして味わってもらいたいというのが飲食店の本音かな」

なぜ、気仙沼港の水揚げが減少しているのでしょうか。
専門家は「カツオを北上させる暖流の黒潮の変化」と、「そもそもの資源量の減少」の2つが重なったことが要因と分析しています。

漁業情報サービスセンター 水野紫津葉さん
「今年の春の時点で、秋に2~3キロになる北上群が全然見えてこなかったので、今年は厳しいんじゃないかという予感はしていました」

カツオは例年、春先まで南の暖かい海域で過ごし、夏にかけて若い一部の魚群が豊富なエサを求めて三陸沖まで北上します。
この北上する途中の脂乗りが少ないものを「初ガツオ」、北の海で脂を蓄えたものを「戻りガツオ」と呼びます。
しかし、今年は春先から南方の海域で今後、北上するとみられるカツオの姿が少なく、そもそも戻りガツオがいない状況となり、気仙沼港の不漁につながっていると言います。

カツオ一本釣り船 船員
「漁場は今、千葉県の銚子の近くやけど、東北のほうには何にもいない」

漁業情報サービスセンター 水野紫津葉さん
「今年は暖水が東北海域に流れ込んでくるという状況が解消されてしまいまして、南から来るカツオはなかなか東北海域に来遊しにくいという状況。Wパンチみたいな状況ですね、今年は」

28年連続で生鮮カツオの水揚げ量日本一を誇る気仙沼港。
しかし今年は8月末時点で、去年の同じ時期と比べて2割未満のおよそ6326トン。
首位の千葉県・勝浦港との差は3000トン以上で、29年連続には「黄色信号」が灯っています。

漁期は10月下旬から11月上旬までと見込まれています。

仙台放送
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