占い師として活動していた女が架空の投資話を持ちかけ、知人から1000万円を騙し取った疑いで逮捕された事件で、警察は女を高級腕時計を質入れした別の横領容疑でも再逮捕した。占い師という職業を巧みに利用して集めた総額20億円とも言われる金。知人を騙す巧妙な手口と“消えた”金の行方とは…。
福岡・飯塚市の無職、春山法子こと田齊法子容疑者(51)が9月25日、再逮捕された。3年前の2022年9月、福岡市に住む40代の知人女性から時価200万円相当の腕時計1本を預かって質入れし、現金190万円を横領した疑いがもたれている。

「おまじないかけパワーチャージ」
警察によると、被害女性は田齊容疑者の占いの顧客で「ハイクラスな腕時計を持っておくことが、悪い気を寄せつけないお守りになる」として、2022年4月、一緒に東京の百貨店を訪れ、高級腕時計ロレックスを購入させられたという。

そしてその5か月後、「お守りのパワーが弱くなっているから、おまじないをかけてパワーをチャージする。箱や鑑定書があった方がいい」と言って女性から腕時計を預かり、その日のうちに質入れしたとみられている。

また、質入れして得た190万円のうち約150万円は即日、クレジットカードの支払いのため引き落とされた形跡があるという。田齊容疑者は警察の調べに対し黙秘しているという。
「ウラの組織にお金預けてる」
田齊容疑者は別の知人女性に2018年、「建物の土台に水晶を埋め込んで風水を調整し、付加価値を付けて売却する投資案件の枠が空いた」などと嘘を言い、現金1000万円を騙し取った疑いで9月4日に逮捕されている。

警察は約70人から総額20億円程度を集めたとみて調べているが、捜査関係者によると、取り調べの中で田齊容疑者は「ウラの組織にお金を預けている。何でみんな言ってくれないのかしら?知ってるはずなのに」などといった趣旨の供述をし、詐欺容疑について否認していたことが分かった。

知人を介して10年ほど前に田齊容疑者に出会ったという北九州市在住の被害女性は、合わせて2億6000万円を指定された口座に振り込んだと話す。

田齊容疑者についてたずねると「非常にせっかちで、『お金を明日までに用意しろ』って言ってくるの。もうちょっと冷静だったら、そんなお金ないよって言えばいいんだけど、たまたまあったりするもんだから…。『これが1カ月で利子が10%付くのよ』っていうのが多いのね。『何パーセント付ける』って言った分、利子を付けて返してほしいけど、それがないんだったら元金だけでも全部返してほしいです」と話す。

この女性は、被害に遭った2億6000万円のうち5000~6000万円は返ってきていると思うが、2億円はまだ返ってきていないという。

「占い師になりたい」夢叶ったが…
飯塚市で生まれ育ったという田齊容疑者。高校時代の同級生は、「普通の明るい子だと思います。友達も普通にいたんですが、とりわけ目立っていたとか悪い印象はないです」と当時を振り返る。
ショートカットの髪型が印象的だったという田齊容疑者。将来は、『占い師になりたい』というようなことを話していたという。

2001年頃に田齊容疑者と知り合ったという夫婦は、出会った頃に田齊容疑者から『占星術とかそういうことしかできないからそれをやっていこうと思うんだけど、モニターになってもらえませんか?』と言われたと振り返る。また、当時の田齊容疑者の暮らしぶりについては、「お金、全然なかったと思います、多分。『車の免許取りに行きたいけどお金がないんですよね』と1回だけポロッと言ったことがある」と話した。

しかし、それから10年以上が経った2015年頃、田齊容疑者は、様々な人脈ができたことをアピールし、それと同時に投資話をするようになったという。

夫婦も田齊容疑者に合わせて9000万円を預け、現在も5000万円以上が返って来ていないという。

「単に一個人との関係ではなく、被害者同士も以前から知り合っていたり友人だったりという人が多い。占星術的なところでは法ちゃん(田齊容疑者)を信頼、信用しているし…。本当に誰も疑ってなかったんだと思います。信用のバブルというのは、正にそこでしょうね」と被害夫婦の夫が話すと、妻も「悲しいですよね。ただもう悲しいですよね。この間の逮捕映像とかも見た時に、『何でこういうことになったのかな』って。率直に悲しいですね」と長年の信じてきた“親しい人”に裏切られた事実に心を痛めていた。
占い師という学生時代からの夢を実現したはずの田齊容疑者。なぜ、自分を信頼している知人を次々と騙す詐欺行為に手を染めることになったのか…。警察は、“消えた金”の行方を含め、事件の背後関係など、全容解明に向け捜査を続けている。
(テレビ西日本)
