日本では墓への埋葬は火葬が主流だが、最近では「土葬墓地」が増加しているという。その背景を取材した。

週末に「イット!」が取材したのは都心から車で約2時間、埼玉県本庄市にある「本庄児玉聖地霊園」。

この霊園では、6年前から遺体を火葬せずに土に埋葬する「土葬」の受け入れを始めた。1区画30万円だ。
霊園を管理する早川代表は日本で暮らす外国人からの要望が多かったことから土葬の受け入れを始めたと話す。

本庄児玉聖地霊園・早川壮丞代表:
外国人を助けるもまた一つ。人生終わって次の世に旅立つのだから気持ちよく送り出してあげればいい。
宮城県では土葬墓地の検討自体を撤回
土葬の墓地をめぐっては、宮城県で「外国人が増えている」ことや「日本人にも土葬を希望する人がいる」として村井知事が土葬墓地を整備する検討を続けてきた。
しかし…。

宮城県・村井嘉浩知事(18日):
熟慮したうえで土葬墓地の検討自体を撤回することと致します。
土葬墓地の構想に対し環境への影響を懸念する声などが寄せられ検討を撤回したのだ。
そもそも日本では、なぜ火葬が主流となったのか。
死者を巡る倫理を研究している上智大学大学院の佐藤教授に聞いた。

上智大学大学院・佐藤啓介教授:
基本的には土葬の方が多いのは間違いないし、土葬が認められている国が世界的にはほとんど。日本も土葬が主だったが、明治時代になって「土地が足りなくなる」かもしれないという理由と「公衆衛生上病気が発生」するかもしれないという理由。一気に火葬に転換した。
国内で土葬できる墓地は10カ所ほど
日本での土葬は原則禁止されていないが、自治体から「埋葬許可書」を得て、許可された墓地で行うことが法律で定められている。
現在、国内で土葬ができる墓地は10カ所ほどで、取材した本庄市の霊園はそのひとつだ。最近では、特に外国人を中心に宮城や新潟、沖縄からも依頼があるという。

本庄児玉聖地霊園・早川壮丞代表:
最初の年(2019年)が8人くらいだった。だんだん増えていって今年だけで40人を超えている。
1割近くは日本人 「家族用」の区画も整備
早川代表によると、現在土葬されている169人のうち16人は日本人だということだ。

本庄児玉聖地霊園・早川壮丞代表:
日本人で海外の方と一緒になった方が多い。日本でも土に戻りたいという方がいる。日本人で2人夫婦で入りたいという(予約も)さっきあった。
土葬を希望する人が増える中、取材した霊園では新たな動きを行っている。

本庄児玉聖地霊園・早川壮丞代表:
家族用ということで大きめの区画に6人分が入るようになっています。同じ区域に家族が眠るという形。9月ぐらいまでに4件くらい日本人(の予約があった)。
“家族での土葬”はすでに成約済みとなっているところも多いという。今後、区画を整備することで霊園では最大3000人まで受け入れが可能になる想定だということだ。

上智大学大学院・佐藤啓介教授:
少子高齢化などでお墓を引き継いでくれる人がいなくなる中で葬送の多様化が起こっている。自然葬とか樹木葬とか。そう考えると多様化の中で土葬というのが一つのオプションになること自体は変なことではないと私は思う。
佐藤教授は、葬送のあり方が多様化する一方、そこに生じる課題にも目を向けていく必要があると指摘している。
(「イット!」9月22日放送より)