宮城県が検討を続けていた県内での土葬墓地の整備について、村井知事は9月18日の議会で「検討自体を撤回する」と表明しました。市町村への意思確認で、受け入れるという回答が得られなかったことに加え、県民の不安の声を考慮したとしています。

宮城県 村井知事
「熟慮した上で、土葬墓地の検討自体を撤回することと致します」

18日の県議会で村井知事が撤回を表明した土葬墓地整備に向けた検討。県は県内の人手不足を補うため、インドネシアなどから積極的に働き手を受け入れていて、移住者などからの要望もあり、県内での土葬墓地整備を検討してきました。

土葬ができる墓地は全国に10カ所ほどしかなく、イスラム教徒の移住者が県内で亡くなった場合、遺体を県外の遠くの墓地まで運んだり、祖国に空輸したりする必要があるということで、村井知事は、その必要性を強調していました。

宮城県 村井知事(去年12月)
「多文化共生社会と言いながらですね。そういったところまで目が行き届いていないのは、行政としていかがかなと強く感じましたので批判があっても、これはやらなければならないと思っています」

一方で、この構想に対しては、風評被害や環境への影響を懸念する声が数多く寄せられていました。

村井知事は「日本人の中にも、土葬を希望する人がいる」と検討を続けてきましたが、18日、ついに撤回。理由については次のように述べました。

宮城県 村井知事
「土葬墓地の設置にあたっては、仮に適地が見つかったとしても、墓地埋葬等に関する法律に基づく地元市町村長の許可が必要となります。そのため、9月13日から17日までに県内の市町村長全員に電話を致しました。その結果、仮に県から土葬墓地の打診があったとしても受け入れることはできないという意見ばかりでございました。実現することは極めて厳しいという状況にあるため、熟慮した上で、土葬墓地の検討自体を撤回することと致します」

議会終了後、取材に応じた村井知事。県民の不安の声も判断の理由だったと述べました。

宮城県 村井知事
「反発はいいんです。いつも反発受けていますから。お墓ができることによって、何かすごく不安に思っている。この不安感を県民の皆さんに抱かせるというのは、知事としてよろしくないと」

また、「あくまで検討段階だった」とする村井知事。10月9日に告示を迎える県知事選での争点化を防ぐためではとの指摘に対しては。

宮城県 村井知事
「私は前々から言っているように、『やる』と一言も言っていません。『検討します』『どうなるかは分かりません』ということをずっと言い続けておりましたので。知事選のマニフェストに載せないと前々から言っておりましたので、そもそも争点化するのは、おかしいと思う。したがって、選挙の前だからとかいうことはあまり関係なくですね、もともと、この問題は、選挙では県民の皆さんに信を問うものではないと、そういう段階にまだ来てないと思っておりましたから、それは今たまたま選挙が近かったというだけだと、そう理解していただきたいと思う」

また、村井知事は「この問題は国全体で考えるべき問題だと思う」とも述べました。

県内の在留外国人は去年12月末時点で、2万9878人となっています。

西ノ入菜月アナウンサー
「村井知事の突然の土葬撤回、県民はどのように受け止めているのでしょうか」

60代
「反対も多い案件でしょうから、いろいろ考えて結論だったと思うので、それはそれで尊重したい」

70代
「支持しない・するには、別に関係ない。土葬に関しては」

10代
「日本人の視点からすると、土葬って異文化的で身近に感じない」
「県民の声に耳を傾けるとかならよいが、選挙のために選挙に勝つためにとかなら、ちょっとどうなのかなって思う」

土葬墓地の整備を要望してきた、石巻市に住むソヨドアブドゥルファッタさんです。バングラデシュから日本に移り住んで30年。村井知事の土葬墓地検討撤回について。

ソヨド アブドゥルファッタさん
「村井知事、要望聞いてくれて、ここまで動いてくれたことは、たぶん日本の中で初めて。だから、土葬墓地できていないことに対して、私はショックは受けていない。私は日本好き、日本人好き、日本の食、全部好きですよ。私は外国人で日本にいる限り、いろんな外国人の一部代表として、なんとかできればいいかなと」

土葬墓地への理解が広がるよう、今後も活動していきたいと話しました。

ソヨド アブドゥルファッタさん
「みんなの反対の声を私にぶつけてほしい。私はそれを溶かすことは頑張ります。そういう対話の場所が欲しい」

仙台放送
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