敬老の日を機に、人生100年時代を幸せに生きるヒントを探る。世界の海を巡った大型貨物船の元機関長が、故郷・宮崎県小林市で田舎暮らし体験施設「いろどりの里」を運営している。農業体験や交流を通して地域活性化を目指す75歳の挑戦を追った。

元機関長が「田舎暮らし体験施設」を開設

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秋の味覚、栗。小林市須木で栗農家として働く夏木政和さん(75歳)は、18年前まで船乗りだった。夏木さんは大手海運会社で39年間勤務し、大型貨物船の機関長という大役を担っていた。

栗農家 夏木政和さん:
一級海技士という国家試験に合格することができた。努力して。袖章の金筋が4本線でしょ。これが一番船乗りの偉い印。

夏木さんは世界各国を航海する中で、様々な経験をした。航海記録を見せてもらったところ、「座礁」「海賊」など、穏やかではない記述が散見された。

栗農家 夏木政和さん:
海賊なんか10回20回じゃないよ。戦ったのは。世界各国ほとんどまわった。行っていないところは、大げさに言ったら北極と南極だけ。いろんなところを回るうちに、家の周りの自然が一番素晴らしい所だと思うようになった。

数々の冒険を経て、夏木さんは改めて故郷・須木の魅力に気づいたという。しかし、故郷に帰省する度に過疎化が進む現状を目の当たりにし、寂しさを感じていた。

栗農家 夏木政和さん:
だいたい10カ月から1年に1回、ここに(須木)に帰ってくる。最初は気づかなかったが、だんだんと人口が減る、寂れていっているのを1年1年感じていた。

57歳で早期退職、第2の人生へ

転機は57歳の時。両親の介護のため船乗りを早期退職し、栗農家となった。そして8年前、田舎暮らし体験施設「いろどりの里」をオープンさせた。

古民家を改修した宿泊施設に加え、耕作放棄地を活用した釣り堀や、自然の清流を利用したテントサウナなどを整備。栗拾いなどの農業体験も提供している。

世界を見て気づいた「交流」の重要性

船乗りとして世界を見てきた経験から、夏木さんは「交流」を重視している。

栗農家 夏木政和さん:
何カ国も行くうちに、最初に行ったところなんか忘れてしまう。やはり人間の記憶に残るというのは、行ったところで交流が生まれて、次に行くときに友達が外国にできる。そういうところが印象に残る。

「いろどりの里」では、修学旅行生やインバウンド観光客など、様々な人々を受け入れてきた。夏木さんは、田舎暮らし体験をビジネスモデルとして若い世代に示すことで、小林市への移住・定住を促進したいと考えている。

栗農家 夏木政和さん:
農業のやり方も変えないといけない。農業一本じゃやっていけないから若者が帰ってこない。農業を主体にして、農業体験などで稼げるという実態を見せていけば、若い人も『こういうことをやってみよう』となる。見本を見せるのがいまから私がやること。

挑戦の原動力は「楽しむこと」

船乗りから農家、そして地域おこしへと挑戦を続ける夏木さん。その原動力は、「楽しむこと」だ。

「年老いた人も何が大事かといったら、働く楽しみが健康につながる。毎日を楽しく生きるというのが、一番自分の人生の中では大切なこと。それだけは基本にある。自分が一番楽しむんだ」

(テレビ宮崎)

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