普段の生活の中でもしものときに備える。小さな町の挑戦が広がりを見せ始めています。
雄大な自然の中でバードウォッチングを楽しむ人たち。
すると、突然“食べられる野草探し”が始まりました。さらに、広い畑で芋掘り体験も。
でも実はこれ、私たちの未来を守るための大切な取り組みなんです。
北海道・北東部に位置する自然豊かな町、小清水町。
8月下旬に役場で行われたのが、「小清水フェーズフリーツアー」です。
“フェーズフリー”とは、日常時と非常時、2つのフェーズを分けることなく普段の生活を豊かにしながら、災害などに備えるという考え方。
「小清水フェーズフリーツアー」では、小清水町が持つ自然の豊かさを堪能しながら、災害時などのもしもの際への備えを学ぶことができます。
ツアーを企画した乃村工藝社の橋本俊介さんは「小清水町の認知度アップというのもありますが、フェーズフリーの取り組みを世の中に広げていくことはとても大事なことだと思っていて」と話します。
取材した日に参加していたのは、民間企業の社員など全国から集まった11人。
小清水町の役場庁舎は2年前に完成したばかりで、建物内の随所にフェーズフリーな仕掛けがありました。
コインランドリーは、普段は年中無休24時間利用できる他、停電などの非常時でも非常用電源や貯水槽を活用して誰でも利用可能になっています。
また、会員制のフィットネスジムは非常時の避難場所になり、カフェスペースは炊き出しに利用できるなど、日常時・非常時を問わず多くの人が利用できるようにさまざまな工夫が施されています。
次に参加者が訪れたのは、フェーズフリーの認定こども園。
死角の少ない見通しがよい空間としたり、子どもたちが避難しやすいよう園庭側に豊富な出入り口を設けています。
この後は、役場に戻って「一般社団法人フェーズフリー協会」による講義を受けます。
そして、日が暮れてからは屋外でのバーベキューがスタート。
電源などの設備が限られている中で、いかに行動することができるのか。
食を楽しみながら“もしもの際への備え”を体感します。
翌朝、参加者が挑戦したのがバードウォッチング。
都会では体験できないことに皆さん興奮気味ですが、ガイドから「いざとなったときに、これは食べられるというものを知っておくことはとても大事なこと。皆さんにもこれから探していただきたいと思います」という言葉がかけられました。
災害時の食糧確保と自然の恵みを体感する“食べられる野草探し”。
これぞ、自然豊かな小清水町ならではのフェーズフリー体験です。
最後は、参加者全員でジャガイモの収穫体験。
ジャガイモが植えられている広い畑は、もしものときの天然の食料貯蔵庫にもなるんです。
東京から参加した建築会社社員の女性は「ジャガイモを取らせていただくという食につながるところとか、フィールドワークがすごく印象に残りました」と話し、沖縄から参加した商社社員の男性は「出会いの場というか、いろいろな人たちが組み合わさることでよりいいものができていく」と話します。
北海道・小清水町 石丸寛之産業課長:
今回は企業さま向けの研修という形で進めさせていただいたんですが、次回以降は行政機関の職員の方にも参加していただいて、まずフェーズフリーという部分で小清水町を知ってもらって、関心を持っていただきたいと思います。
感じることで気付き、やってみることで身につく“もしもの備え”。
小さな町の大きな挑戦はこれからも続きます。