日本一の実績を持つウエイトリフター、寿司の道へ

この記事の画像(13枚)

富山市内の寿司店で真剣な眼差しで包丁を握る花城瑞樹さん(22)。今年4月から寿司職人として修行を始めた彼には、実はもう一つの顔がある。それは、複数回の日本一に輝いたウエイトリフティング選手だ。

「小さい頃から寿司職人って非常にかっこいいなと」と語る花城さん。香川県出身の花城さんは、子どもの頃からの憧れを胸に、料理人としての経験がないままゼロからの挑戦を始めた。日々、先輩から包丁の扱いや握りの所作までマンツーマンで指導を受けている。

「デュアルキャリア採用」で夢を追う環境を実現

花城さんが富山に来た理由の一つが、勤務先の富山市の飲食店運営会社「ビーライン」が導入した「デュアルキャリア採用」だ。この制度はアスリートとして競技を続けながら、寿司職人としても働けるよう正社員として収入を安定させることで、競技に打ち込める環境づくりを目指している。

ビーラインの大坪悟社長は「時間と給与が月のスケジュールの中でしっかりと組み立てられることによって競技にも打ち込める環境があると考えている」と語る。さらに、「日本人が誇れる食文化寿司と自分が成し得たいスポーツの2つを地球上どこに行ってもできる環境を作るというのは本人にとっても非常にメリットがある」と制度の意義を強調する。

二つの世界での苦労と工夫

中学時代から全国大会で優勝を重ね、日本大学在学中には2度の日本一に輝いた花城さん。「記録という面では完全に数値化されている。記録を1キロでも超えた瞬間が本当に楽しい」とウエイトリフティングの魅力を語る。

一方で、競技で培った筋力が寿司職人の修行に思わぬ影響を与えることも。「シャリをやわらかく握る必要がある。どうしても競技柄力を入れてしまうので、シャリを固く握ってしまうのでそこが困っている」と苦労を明かす。

練習した寿司の評価について、「とやま鮨」の早川健一さんは「まだお客様に出せる商品ではない。シャリの大きさもバラバラ、こうすれば倒れてしまうお寿司。これはやり続けることでしか会得できないので、これからの伸びしろが楽しみ」と花城さんの成長に期待を寄せる。

パリ五輪選手の存在も富山を選んだ理由に

花城さんの練習拠点は富山市内のジム。ここは昨年のパリ五輪に出場した村上英士朗選手が監修した施設だ。この村上選手の存在も花城さんが富山を選んだ大きな理由となった。

「目標ですね。オリンピアンになりたいというのもあって。村上選手は目標どころじゃない」と憧れを語る花城さん。日中は寿司店で働き、夕方からはジムで練習する生活を送っている。

仕事と競技の両立には工夫が欠かせない。「ゴールデンウイーク中とかお盆期間中は店が忙しい時期というのもあり、その時は練習強度を下げるが、練習時間を長くしたりして、逆にお客さんがあまり来ていない時に練習強度を上げてその分時間も多めにとっている」と花城さんは説明する。

周囲の期待と支え

村上選手の母・直江さんも花城選手を見守る一人だ。「モチベーションは村上選手より花城くんの方があると思う。英士朗選手はいつも黙ってやっていてるが、彼はよし頑張るぞと自分に声援を送りながら、練習するタイプなので見ていても面白いし、応援している」と花城さんの熱意を評価する。

寿司店を訪れた客からも「えっ、そうなんですか、見た目わからないですよね。一番上のオリンピックを目指してもらいたい」と期待の声が上がる。

「オリンピックに出場し、結果を残したい。欲を言えば金メダル。一番がいちばんカッコいいので。寿司リフターといえば花城だという感じになれば」。寿司を握る手とバーベルを握る手で夢を掴もうと奮闘する二刀流アスリート・花城瑞樹さんの挑戦は続く。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。