2022年、宮城県石巻市の障がい者支援施設で、入浴支援を受けていた阿部加奈さんが全身にやけどを負い、その後死亡した事故で、母親が仙台放送の取材に応じました。「癒やしの加奈ちゃん」と親しまれた娘の命が失われた真相は、明らかになっていません。

阿部加奈さんの母親
「写真は全部、歯の出て笑っている状態。園でもやっぱり好かれていたのかね。職員には『癒やしの加奈ちゃん』と呼ばれていたり」

亡くなった阿部加奈さんの母親です。いつも笑顔だったという加奈さん。笑っている写真ばかりです。

阿部加奈さんの母親
「私にとっては天使ですかね、天使というか与えられた子供だと思って、障がい者という感覚ではない。ただ本当に生きていてほしかったです。もう本当に悔しいです」

重度の障がいがあった加奈さんは、2022年12月30日、石巻市門脇の障がい者支援施設「ひたかみ園」で、職員の助けを受けながら入浴した際に全身にやけどを負い、その後敗血症で亡くなりました。

施設の検証では、お湯の温度は50度前後で、加奈さんは約5分間入浴しました。

阿部加奈さんの母親
「見る影もない。“人の体かな”というくらいの赤さ。ぎゅっと抱きしめることもできなかった。それが一番つらい」

お湯をかき混ぜる作業が徹底されていなかったことや、湯船の表面でしか温度が確認されていなかったことが、事故の要因とみられています。

そもそも、母親は加奈さんを入浴させないでほしいと伝えたといいます。

阿部加奈さんの母親
「当時、コロナもはやっているし、風邪ひかれると大変な思いするので」

しかし事故後、施設側からは「そのようなことは聞いていない」などと説明され、不信感が募りました。

阿部加奈さんの母親
「誰も加奈さんのお母さん見た人もいないし、そのようにしゃべった人もいないというわけね。嘘をついているイメージしかない」

家族で加奈さんを支え、家族もまた、支えられていました。

阿部加奈さんの母親
「私たちがこの人に支えられているという部分というか、そのために私たちが健康でいるんだなって。この子がいるから健康なんだなって気持ちは大きい」

何をしても帰っては来ない、娘の命。せめてもの願いは、真相究明と、悲惨な事故を繰り返さないことです。

阿部加奈さんの母親
「園にもう少し体制をきちんと立て直してほしい」

警察は当時の現場責任者など3人を、業務上過失致死の疑いで調べています。

仙台放送
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