突然発症し“治療までの時間が命”ともいわれる脳卒中。日本人の死因の第4位に入り、年間約10万人が亡くなっている。初期症状を見逃さないためのポイントや、専門医が常駐していない医療過疎地域でも迅速な治療につなげる仕組みを医師に聞いた。
若年層でも血管に負荷がかかると発症の恐れ
今回、脳卒中について聞いたのは福井赤十字病院の副院長で脳神経センター長を務める西村真樹医師。「脳卒中は脳の血管の病気で、突然起こりまひや意識障害が起こる病気として昔から知られている」
脳卒中には大きく分けて2種類がある。脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血、くも膜下出血」だ。
その原因は「脳の血管を傷めつけることで、その最大の危険因子は高血圧」だという。糖尿病や高コレステロール、肥満、喫煙なども血管を傷めることにつながり、脳卒中のリスクを高める。高齢者だけでなく若年層でも注意は必要だ。
また、血管が収縮し血圧が高くなりやすい冬に多い傾向があるものの「夏は血液がドロドロになることによって脳梗塞の割合が高くなる」という。
年代や季節を問わず、生活習慣や体質によっては注意が必要となる。

初期症状があれば迷わず受診を
「脳卒中の治療は出来るだけ早く診断し、治療を早く進めないといけない」と西村医師。
早期治療につなげるために、初期症状の段階で発見する必要がある。そのために覚えておきたいのが「FAST(ファスト)」という標語だ。
Fはフェイス(顔)=顔の片側の筋肉が下がって動かない。
Aはアーム(腕)=片方の腕に力が入らない。
Sはスピーチ(言語)=ろれつが回らない。
Tはタイム(時間)=早めの受診。
顔の片側の筋肉が下がって動かない、片方の腕に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が理解できないなどの症状に少しでも当てはまる場合は、ためらわずに救急車を呼ぶなどし、受診する必要がある。

「発症から4時間半」での点滴治療がポイントに
西村医師によると「脳卒中の中の7割くらい占める」というのが脳梗塞。
その脳梗塞の治療では「発症から4時間半が一つの鍵とされている」という。「発症から4時間半の間であればTPAという血栓を溶かす薬を点滴で打つことによって症状が改善する人がいる」
この点滴治療を24時間行える病院は県内に11カ所ある。しかし、場所は福井市に集中していて、行き届かない地域もある。

「専門医がどこの病院でも24時間いる体制を維持するのは困難」と西村医師。
そこで、医師不足などで迅速な対応が難しい地域で活用されているシステムがある。治療に必要な画像などを共有することで遠隔で診断や治療をサポートするシステム「Join」だ。
「Joinを活用することで、地域の医師から患者の写真をリアルタイムで送られてくるようになっている」(西村医師)
福井赤十字病院では、Joinを通して地域の医師から送られてくるMRIやCTなどの画像や患者情報を専門チームが確認し、必要な治療や、搬送の必要性などを現場の医師に伝える。そうすることで迅速に治療を開始することができるという。

「Joinを使った連携などを通して、互いに足りない部分を補てんし合うのが地域医療にとっては大事」(西村医師)
時間が命といわれる脳卒中治療。医療過疎地域を補う仕組みが、県民の命を支えています。