9月5日に公開された映画「遠い山なみの光」。長崎市出身のノーベル賞作家カズオ・イシグロさんの原作を映画化した、1950年代の長崎を舞台とするヒューマンミステリーだ。映画公開を記念して主演の広瀬すずさんが長崎を訪れ、映画ゆかりの地や長崎グルメを楽しんだ。
ノスタルジック!映画と同じ時代の建物を訪ねる
長崎を訪れるのは2回目という広瀬すずさん。

長崎は前日は土砂降りだったが、撮影日は快晴となった。すずさんは「晴れ女です!」と元気な笑顔を見せた。

まずは映画の時代を体感するため、映画と同じ時代に建てられた「旧魚(うお)の町団地」を訪れた。木造平屋建てが主流だった時代に鉄筋コンクリート造の4階建ては憧れの的。50戸の募集に対して1000件もの応募があったという。今で言う「タワマン」のような超人気物件だった。

4階にある423号室は当時のまま保存されていて、映画の世界にタイムスリップしたようなノスタルジックな空間が広がる。
「この小窓、映画にも出てきます」
映画の撮影前、石川慶監督と美術制作スタッフがこの団地を訪れた。監督は部屋のスケール感やキッチンの小窓に興味を持ったそうだ。

すずさんは「この小窓、映画にも出てきます。この小窓を使ったアングルも面白くて、作品にもありました」と、映画のシーンを思い出した。

台所は、作った料理を居間に出すための小窓、生ゴミを捨てるダストシュート、通気性のいい棚など、当時の最新鋭の設備が整った空間だ。

すずさんは、「お茶を注ぐシーンがあったので、コップや茶筒の配置も自分で決めながら撮影したんですけど、この部屋はその構図とすごく似ています」と話す。映画のワンシーンを見てみると、空気感がとてもよく似ている。

219号室と220号室はリフォームされ、民泊として活用されている。昭和レトロな部屋は映画の世界観を体験できる貴重な場所だ。

9月12日から15日は、102、110号室の魚ん町+(うおんまちプラス)で映画のパネル展やトークショーが開催される。
止まらない“ニラ愛”中華料理店でニラ尽くし!
長崎グルメを楽しむため、長崎出島ワーフにある中華料理店「Red Lantern(レッドランタン)」へ。

創業20年、ランチからディナーまで幅広いお客さんで賑わう人気店だ。

最近「点心」にはまり、いろんな種類を頼んで楽しんでいるというすずさん。自他ともに認める大の「ニラ好き」だ。「自炊する時も大体ニラが入っている。なんでもとりあえず入れたら美味しい」と、“ニラ愛”を熱く語った。「シンプルにポン酢で食べるのが好きで、1人で3~4束食べる」との告白に一同驚く場面も。

そんなすずさんのために特別メニューが用意された。ニラ多めの海老玉チャーハンなど、ニラをふんだんに使ったメニューが次々と運ばれてきた。

すずさんは一口ほおばるごとに「最高です」と、屈託のない笑顔を見せた。お店から点心の盛り合わせのサプライズもあり、終始大満足のすずさんだった。
演じた「悦子」いまだ正解見えない
戦後の長崎を舞台にした作品での演技について、すずさんは「演じた悦子という女性がすごく感情が読み取りづらい女性像だった」と振り返る。

「戦争や長崎で実際に起きたことを一度肌で感じた後の人生を描く」という難しい役に向き合ったすずさん。「正直知らないことだらけで、この女性の感情の動き、流れをどういう風に発信していくべきなのか、作り上げていくべきなのか。とても悩みながら、いまだに正解が見えていない」と、本音を語った。

映画の撮影が終わった今、長崎を訪ねたことについて「エネルギー溢れる街で、『あ、本当にここに悦子がいたんだ』というのがとてもリアルに感じられた」と話す。「もし撮影時に来ていたらまた違う悦子になってたかも」と思うほど、長崎の街から受けた印象は大きかったようだ。

山の上から長崎の街を眺めながら「今のこの景色とまた全然違った長崎の山なみがあった時代。長崎の物語だけど、この時代を自分の事としてこの作品を楽しんでもらって、皆さんの希望になったら嬉しい」と、映画への思いを語った。
映画「遠い山なみの光」
映画「遠い山なみの光」は絶賛公開中だ。

悦子の娘・ニキは、作家を目指し、母・悦子の半生を作品にしたいと考える。戦後復興期の活気溢れる長崎の記憶。しかし悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く。

女たちがついた“嘘”から始まる物語が、スクリーンに描き出される。
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(テレビ長崎)