北海道の釧路湿原周辺で進むメガソーラーの建設。
釧路市は9月4日、設置を許可制とする条例案を市議会に提出した。
開発に歯止めがかかり、希少な生物は守られるのだろうか?
「道路脇にソーラーパネルがあります。また、ソーラーパネルがあります」(沼田海征 記者)
釧路湿原周辺で目立つメガソーラーのパネル。
釧路市によると届け出を受け稼働しているのは21件で、付近では特別天然記念物のタンチョウの姿が確認できる場所もある。
「太陽光発電施設の適切な設置、および管理のための必要な手続き等について定めるものであります」(釧路市 中村基明副市長)
釧路市は9月4日、建設を許可制とする条例案を市議会に提出。
設置に歯止めをかけるのが狙いだ。

メガソーラーを巡る問題
メガソーラーを巡っては、こんな問題も起きている。
タンチョウの親子の背後で動くダンプカー。
大阪市の事業者が約6600枚のパネルを設置する工事を進めている、メガソーラー予定地。

環境省の委託を受け、オジロワシなど希少な鳥類の保護を行っている猛禽類医学研究所は予定地から300mほどの距離にあり、代表の齊藤慶輔さんは建設を危惧している。
「工事中に私たちが発見したんですが、今年生まれたひなを連れたタンチョウの夫婦がいて、一番近い時には工事現場から150mの所で餌をついばんでいたんです」(猛禽類医学研究所 齊藤 慶輔代表)
齊藤さんは希少生物が生育する場所にもかかわらず、しっかり現地調査がされないまま着工されたとして工事に疑問を感じている。
事業者側は釧路市のガイドラインに従い希少生物の調査を行い、生息していないという結果を提出したとしているが、釧路市側の認識は異なる。
「表題が『予備調査』となっているもので、この調査以降に本調査が行われ、専門家の意見とともにわれわれの元に届くと思っていました」(釧路市立博物館 秋葉薫館長)
本調査を待っているうちに工事が始まったという。

釧路市の鶴間秀典市長は、
「特別天然記念物タンチョウなどの減失・毀損等におよぶ可能性が危惧されるという、過去に例を見ない事案が発生したことは誠に遺憾」(釧路市 鶴間秀典市長)
釧路市教育委員会は工事現場付近に生息する希少生物への影響調査が不十分だとして、事業者に再調査を求めた。
事業者側はUHBの取材に対し「順を追って言われたことに対して適切な対応を行っている。釧路市の担当からは受理してもらっている」として、工事を続ける考えを明らかにした。

建設の許可制は有効か?
止まらない釧路湿原周辺でのメガソーラー建設。
釧路市は無秩序な開発に歯止めをかけようと、出力10kW以上のメガソーラーの設置を許可制とする条例案を提出。
条例案では、タンチョウなど5つの希少生物が生息している可能性が高い区域では事業者に生息調査や保全計画の作成を義務づけ、従わなければ建設を許可しないとしている。
「この条例をしっかり通して、皆さんと一緒に釧路湿原の自然、釧路全体の自然も含め守っていきたいと思っています」(釧路市 鶴間市長)
メガソーラー建設の許可制は有効なのか。

提出された条例案について、環境保全に詳しい専門家は、
「出力10kW未満は対象外となると、10kW未満の施設をつなぐということが全国で多く行われている。1か所では9.99kWだが、隣にも似た名前の太陽光発電所があって、こちらも9.99kW。全てあわせると100kWを超える大きい発電所になっている可能性がある」(山梨大学 鈴木猛康名誉教授)
抜け道につながる可能性があるとして、出力で制限しない方がいいと指摘。
建設に歯止めはかかるのか、今後の動きが注目される。
