凍結中の口座でも一定額払い戻しは可能

「死去のあと、すぐに銀行口座が凍結されてしまって、葬儀の費用や生活費を引き出すことができなくて困った」という話を耳にしたことがあると思いますが、役所に死亡届を出したからといって銀行口座の凍結(入出金停止)が自動的に行われるということはありません。

金融機関は「名義人が死亡したことを知ったときに凍結する」というのが基本です。

故人の家族が金融機関に名義人の死を知らせて、口座を凍結してもらい、預金残高証明書を発行してもらいます。

これは、故人の相続財産を守るための制度で、相続人のだれかが勝手に使ったりするのを防ぐためのものです。遺産の分割が決定すれば、口座の凍結は解除されます。

一方で、遺産の分割でもめて、何年も長引くという恐れもあります。そういったケースをフォローするため、2019年に「預貯金の払い戻し制度」が設けられました。

(『【図解】身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2026年版』から抜粋)
(『【図解】身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2026年版』から抜粋)

これにより、各相続人は、凍結された預金口座から、決められた額まで払い戻しができるようになりました。金額は、上の図のように決まります。

必要であれば、この預貯金を葬儀費用や相続税の支払い、生活費などにあてることができます。ただし、その金額が相続分以上の金額になった場合、返還を求められる可能性もあるので注意が必要です。

『【図解】身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2026年版』(扶桑社)

監修:曽根恵子
株式会社夢相続代表取締役。相続実務士(R)。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。監修書に『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』、『家じまい・墓じまい・相続[ 図解]実家問題がすべて解決する本』(扶桑社)などがある。

曽根恵子
曽根恵子

株式会社夢相続代表取締役。相続実務士(R)。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演407回以上、新聞・雑誌取材協力980回以上、セミナー講師実績671回以上と幅広く活躍。著書・監修書86冊、累計81万部発行。監修書に『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版』、『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』(扶桑社)などがある。