静岡県牧之原市の認定こども園で、送迎バスに河本千奈ちゃん(当時3)が置き去りにされ死亡した事件から9月5日でちょうど3年となる。この日を前に千奈ちゃんの両親が報道各社にコメントを寄せ、「表面的には落ち着いた暮らしをしているように見えても、それは痛みが癒えたことを意味するわけではありません」と現在の心境を吐露した。
杜撰な管理…元園長には実刑判決
2022年9月5日。
静岡県牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」で、河本千奈ちゃん(当時3)が送迎バスの中に長時間置き去りにされ、重度の熱中症により死亡した。

この事件をめぐっては、検察が当日バスを運転していた当時の園長と千奈ちゃんがいないことに気付きながらも保護者への連絡を怠ったクラス担任を起訴。
裁判では、元園長に禁錮1年4カ月の実刑判決が、元クラス担任には禁錮1年(執行猶予3年)の有罪判決が言い渡された。
殊に実刑判決となった元園長については、裁判長が「運転手として、送迎中の園児の安全を確保するという基本的な注意義務を怠った過失の程度は著しい。保護者から託された園児の安全確保に対する意識の欠如は甚だしく、園児の命を預かる保育者として厳しい非難を免れない」と断罪している。
家を手放し新生活 その理由は…
最愛の娘を失ってから3年が経つのを前に、千奈ちゃんの両親が報道各社にコメントを寄せた。
両親によれば、事件当時は牧之原市に念願のマイホームを建てたばかりで、家族で新たな生活を積み重ねている最中だったという。
そして、その家には「千奈との日々、笑顔、声、そして多くの希望が詰まっていました」と振り返った。

ただ、一家は2024年、家を手放し、牧之原市を離れることを決断。
現在は別の場所で生活を送っている。
その理由について「あまりにも深い悲しみと向き合うことの苦しさに加え、加害者たちと生活圏が重なる環境に身を置き続けることが、精神的にどうしても耐えられなかったからです。日々の暮らしの中で、その存在を意識せざるを得ないことは、心の回復を妨げるものでした」と記した。
深い悲しみは今も…それでも前へ
事件当時、一家には次女が誕生したばかりで、その次女は今、千奈ちゃんが亡くなった時と同じ3歳に。
ただ、次女の成長は以前から両親が述べている通り2人の支えとなっているものの、「その姿に、かつての千奈の面影や声が重なり、日々の中に喜びとともに、言葉にならない切なさが満ちてきます」と苦しい胸の内を吐露。
そして、「むしろ、日常に戻っていくほどに、千奈がいないという事実の重さが際立ち、心の痛みは静かに、深く沈み込んでいくのを感じます。たとえ、表面的には落ち着いた暮らしをしているように見えても、それは痛みが癒えたことを意味するわけではありません」と、今も深い悲しみ中にいることを明らかにしている。
一方で、「私たちは歩みを止めることなく、生きていかなくてはなりません。状況は静かに、しかし確実に前へと動いています」とした上で、「この事件に対する社会の記憶と関心が風化することなく、事実に基づいた報道が続いていくことを、心から願っております。千奈の尊厳と、私たち家族の静かな暮らしをそっと見守っていただけましたら幸いです」と結んだ。
(テレビ静岡)