3日は避難生活による体調悪化などが原因で亡くなる「災害関連死」について。
いま、官民あげた対策が進んでいます。
地震や津波などから逃れても、その後の避難生活の疲れやストレスなどで体調が悪化し、命を落としてしまう「災害関連死」。
2016年の熊本地震では直接死の4倍を超える226人が亡くなっています。
去年1月の能登半島地震でも県内の7人を含む428人が災害関連死で亡くなりました。
*小倉憲一医師
「一番感じたのはトイレの問題ですね」
能登半島地震で被害が大きかった輪島市と珠洲市を支援した県の小倉憲一医師です。
「災害関連死」を防ぐため、避難所での衛生対策や被災者の健康状態の把握といった保健所の業務を支援しました。
小倉医師が問題視しているのはトイレ。
断水時は不慣れな仮設トイレや、簡易トイレでの排泄が必要となり、避難者の多くが無意識にトイレを避けてしまうといいます。
*小倉憲一医師
「ほとんどの方は、自分の排泄処理をすることはまずない、できるだけトイレをする行為自体を減らしたいと思いは出てくると思う減らす方法として水分を控えるとか食事を取るのを控えることになってしまう。食事が上手く取れない中では、免疫力が下がって感染も受けやすく肺炎なども悪化しやすくなる」
トイレを避けるため、水分を取らなくなれば脱水症状やエコノミークラス症候群などのリスクが高まり、特に、高齢者は注意が必要だと話します。
*小倉憲一医師
「トイレするのが難しいという方もいると思う。免疫が低下する70代80代の方の負担はすごく大きいと思う感染を起こしやすく災害関連死が増えてしまう」
「自治体向けの避難所に関する取り組み指針・ガイドライン」取材した阿部キャスターです。
災害から逃げ、せっかく助かった命が失われてしまう災害関連死。
国は能登半島地震を受けて、避難所の環境を改善するため去年12月に指針を見直しました。
それがこちらです。
トイレ・食事・生活空間・生活用水の4つの項目について、新たな基準が設けられました。
中でも小倉医師の話にもあったトイレは、災害発生当初は「50人に対してトイレが1基」必要で、その男女比が3:1、避難生活が中期段階に入ると「20人に1基」が必要とされています。
生活空間では、1人あたり「3.5平方メートル以上の居住スペース」が必要だと定めています。
では避難所を運営する県内の自治体はどうか。15市町村に確認したところ
トイレでは「50人に対してトイレが1基」の条件に半分以上の8つの市と町が、生活空間では3分の1、5つの市と町が基準を満たせていない状況が浮き彫りとなりました。
ある自治体の防災担当の職員は「自治体としてどれだけ施設があるのかという話になる」と、この基準で備える難しさを感じていました。
また、各自治体が近年取り入れる段ボールベッド。
例えば小矢部市では100個ほど備蓄、今年度は国の交付金で簡易ベッドを720個購入予定ですが、最大避難想定は1万3000人と、多くの自治体で避難者全員分を賄うことは難しいのが現状です。
そんな中、少しでも避難所の環境改善を図ろうとする動きがあります。
避難所のトイレ問題に県内で最も早く取り組んだのが魚津市です。
こちらは市が去年3月に導入した「トイレトレーラー」。
男女共有の3つの個室があり、けん引すれば、どこでも簡単に洋式トイレが設置できます。
満タンの給水で、1200回から1500回水洗でトイレが使えるほか、太陽光パネルとバッテリーを積んでいるため、停電時でも照明と換気扇が使えます。
*魚津市 防災危機管理室 遠藤雅之主任
「トイレトレーラーは被災地のライフラインの復旧状況に左右されることなく使用できる。衛生的に使用できることから導入を決めた。」
市は輪島市にトイレトレーラーを派遣し、およそ1年間、ボランティアの宿泊施設で利用されました。
*魚津市 防災危機管理室遠藤雅之主任
「通常の洋式トイレと変わらない。普段と使用感が変わらないのが大きい。避難者に積極的に利用してもらって、避難所での体調の管理に役立ててほしい」
一方、射水市のアルミ加工会社は、避難所の寝床問題を解消する商品を開発しました。
こちら、普通のホワイトボードに見えますが。
*アルミファクトリー 棚元優太社長
「こちらの面がホワイトボードになっていて、裏面に畳風のベッド生地が入っている。こちらを上にして組み替えることでベッドとして使うことができる。」
大人2人が工具を使わず組み立てなおすと、3分ほどで簡易的なベッドになります。
*アルミファクトリー 棚元優太社長
「例えば小さい子どもと添い寝をすることもできる。高齢者に自宅で生活している
ような安心感を持ってもらえるように畳風の生地を採用した。」
さらに組み替えればテーブルにもなり、1台でホワイトボード、パーティション、テーブル、ベッドの4役として活躍します。
会社にはすでに、県や射水市などから100台以上の注文が入っているということです。
*アルミファクトリー 棚元優太社長
「避難所となりうる場所の備蓄スペースは限られているので、段ボールベッドを備蓄する数も限りがある。普段使いできるものが即座にベッドとして使うことができるのが一番の特徴。」
進化してる、普段使いがキーワードですね!
そうなんです。
ただ、災害時、避難所には想定を上回る避難者が集まることも予想されます。
行政だけに頼らず、個人でも準備を進めることが大切です。
特にトイレは1週間は使えないことを想定し簡易トイレを備えておくこと、食料は3日程度自給できるようにしておくこと、さらに、避難する際に「非常用持ち出し袋」には、薬などといったその個人、家族に必要なものを事前に入れておきましょう。