外食のごちそうといえばジューシーな焼き肉ですが、2025年に入って焼き肉店の倒産が相次いで過去最多のペースとなっていることがわかりました。
一体何が起きているのでしょうか。
「イット!」が今回訪れたのは、東京・港区にある高級住宅街・白金台で個人経営の老舗焼き肉店「炭焼工房 朱雀門」です。
炭焼工房 朱雀門・加藤孝司店主は「16歳でアルバイトに入って、夫婦でやり出したのはだいたい…33年くらい」と、長年焼肉をなりわいにしています。
「閉店」が頭をよぎる瞬間はあるか聞くと、「それはありますね。材料・食材全般、全部材料の値段も上がって仕入れとお店で売る価格が伴わなくて」と話します。
店主がかつてないほどに経営への不安を募らせていたのは、ここ最近の原材料高騰です。
炭焼工房 朱雀門・加藤孝司店主:
国産和牛の黒毛牛のタンを一本仕入れようと思ったら、30年前だと1kg2000円もしなかったと思うが、現状だと1kg当たり6000円~7200円くらいの間。
こうした材料費の高騰などのあおりを受けて、2025年の1月~8月までに倒産した焼き肉店の数は32件。
年間最多だった2024年に並ぶハイペースです。
ちなみに、そのほとんどが中小規模の焼き肉店などだといいます。
店主の加藤さんは、中小規模の焼き肉店には「どうしても(価格を)上げざるを得ない場合も今まであったが、なるべく自分でやれるところはやろう。なるべく安く仕入れて出そう」といった価格を値上げしたくてもできない、というジレンマに直面していると教えてくれました。
青井実キャスター:
値上げのジレンマどうですか?
SPキャスター パトリック・ハーラン氏(パックン):
きついですね。僕が調べたところ、2020年に比べて70%も値上げしている部位が多いんです。その中にはサーロインとか肩とかバラとか人気部位が多いんですね。リーズナブルな値段で提供するお店が今、苦しんでいるのは間違いないですね。
一方で、こうした物価高や値上げの影響の中でも、売り上げを伸ばしている焼き肉チェーンがありました。
それは、全国に焼き肉の食べ放題チェーンを展開する「焼肉きんぐ」です。
お昼時を迎えた店内を見てみると、ほぼ満席状態でした。
一番人気の「きんぐコース」は、100分間で130種類以上が食べ放題です。
1頭からわずか500グラムほどしか取れない肉厚なのにやわらかい「きんぐカルビ」や長さ約20cmもある「壺(つぼ)漬けドラゴンハラミ」。
さらに、食べ応えのあるタン塩にネギがたっぷりとのせられた「ネギ塩きんぐタン」など。
加えて、デザートまでついて「きんぐコース」の料金は3608円~(※店舗によって異なる場合あり)ということです。
味について来店客に聞いてみると、「家族で来るのは初めてなんですけど、子どもとかも来やすいって話を聞いたので。値段の割に種類もたくさん選べるしすごくおいしいと思う」「月1回ぐらい行きます。いっぱい食べるんでよく来ます。味はもう抜群においしいです」と話していました。
さらには、“焼肉ポリス”と呼ばれる店員さんが客に肉のおいしい焼き方や、オススメの食べ方を教えてくれるというサービスもあります。
このサービスに来店客は「ポリスの中でも試験を受けて選ばれた『おせっかいマスター』っていう称号の方に焼いてもらったので、すごくおいしかったです」と満足そうな様子を見せました。
2008年は6店舗しかなかった「焼肉きんぐ」は、2025年6月までに351店舗へと急拡大。
売り上げも右肩上がりで増えています。
「焼肉きんぐ」は、食べ放題コースを2024年100円値上げしました。
さらに、様々な企業努力も行った結果、売り上げを確保できているといいます。
焼肉きんぐ 焼肉事業部・岩谷明弘事業部長:
お肉の仕入れ先であったりとかも多数持った上でしっかりと原材料を抑えながら、工場での加工牛のところも肉ごとに変えてやることだったりっていうふうにして、様々な工夫をしているということが本当に大きい点かなと。
「焼肉きんぐ」では、海外産の牛肉についてはメインの仕入れ先であるアメリカに加えて、オーストラリア・カナダ・ウルグアイの4カ国から輸入。
国内産の牛肉についても複数から仕入れることで、高騰リスクを分散させているといいます。
また、“焼肉ポリス”などの対面の接客に時間が割けるように、配膳ロボや注文タブレットを導入。
今後も、サービスにも注力していくといいます。