「雨でも安心して遊べる場所を」仙台市の新構想
仙台市は、市中心部に位置する西公園に、東北最大級の屋内型の遊び場を整備する方針を打ち出した。計画の素案が9月3日に公表され、施設の概要やコンセプトが明らかになった。
「遊びはこどもの成長の原点」と位置づけ、“杜の都”らしい自然と都市機能が融合した新しい子育て環境の整備に踏み出す。

想定利用者は乳幼児〜小学生 市民の声を反映した“希望の設計図”
施設のターゲットは、乳幼児から小学生までの子供たちとその保護者。市は計画に先立ち、5,500件以上にのぼる保護者アンケートや子供たちからの意見を収集。その結果、「のびのびと体を動かして遊べる広々とした空間」や「飲食可能な休憩スペース」「自然とつながる遊び」への強いニーズが明らかとなった。
アンケートでは、回答者の82%が「開館したら行ってみたい」と回答。無料または低料金での利用を希望する声も多く寄せられている。

“自然×都市”が融合 西公園の魅力を生かした設計
施設が整備されるのは、西公園南側の「多目的広場」跡地(約4,000㎡)。もともと市民プールがあった場所で、多くの子供たちに親しまれてきた。
地形は広瀬川に面した段丘の下段部にあり、上段には芝生広場、北側にはインクルーシブ遊具やアーバンスポーツ広場も整備予定。屋内外で遊びが連続する“立体的な回遊空間”となる見込みだ。

地下鉄から約3分 導線に配慮
さらに、地下鉄大町西公園駅から徒歩3分のアクセスの良さも大きな強み。上段広場から屋上へつながるバリアフリー連絡橋も設けられる予定で、地域内外からの来館を見据えた導線計画が練られている。

さまざまな遊びのエリアと多機能空間
屋内の延床面積は約3,700㎡と、山形市の人気施設「コパル」よりも広く、仙台圏では最大規模。以下のようなゾーンが整備される予定だ。
・ダイナミックゾーン(950㎡):ネット遊具、ボルダリング、すべり台など、上下階をまたぐ大型遊具
・屋内ひろば(500㎡):トランポリンやボール遊びなど、自由に身体を動かせる空間
・工作・アトリエゾーン(200㎡):自然素材を活かした創作活動やワークショップ
・乳幼児ゾーン(150㎡):授乳室やスキンシップ空間も完備、安全で清潔
・読書・くつろぎゾーン(100㎡):静かに過ごしたい親子のための絵本スペース
加えて、屋根付きの半屋外ゾーン(450㎡)では、天候に左右されず砂遊びや水遊びも可能。さらに飲食・交流スペースではワークショップやイベントも開催され、売店の設置も検討されている。

“仙台らしさ”を体現する設計思想
この施設の最大の特徴は、単なる遊び場にとどまらず、「仙台らしさ」と「共生の価値観」を設計に取り入れている点だという。
・広瀬川や青葉山エリアを望める窓配置
・プレーパークや地域団体との連携
・インクルーシブ設計とバリアフリー導線
・地元産木材や自然素材の活用(検討中)
市はこの施設を、児童福祉法に基づく「児童厚生施設」と位置づける方針で、法的整備とともに専門人材の配置も進めるという。

保護者の声「本当に心待ちにしている」
素案には市民の期待の声も多く盛り込まれている。
「雨や猛暑でも思い切り遊べるようにしてほしい」
「山形や福島のように無料で遊べる屋内遊び場を」
「西公園という立地を活かして、自然とつながる空間に」
など、自由記述には1,400件を超える意見が寄せられた。

開館は2029年度目標 整備費は約35億円想定
今後はパブリックコメントを経て、2025年度中に基本計画を策定し、2029年度中の開館を目指す。
事業費の概算は約35億円で、国の交付金も含めて財源確保を進める。運営は指定管理者制度の導入を基本的な選択肢としている。

屋内遊び場が仙台を変える?
新たな屋内遊び場は、「こどもの遊びを軸としたまちづくり」「子育てしやすい都市」への象徴的な一歩として期待されている。
笑顔とにぎわいがあふれる未来の西公園。そこには、子供も大人も自由に過ごせる、もうひとつの“仙台の顔”が広がるかもしれない。
