9月1日は防災の日、そして、今週は防災週間です。
これにあわせ、今週のライブBBTは富山県内の防災対策をクローズアップします。
初回は能登半島地震からの復興の動きの中で将来への備えにも関わる液状化対策がテーマです。
液状化の被害が大きかった高岡市の伏木地区の現状から先週、県が打ち出した異例の支援策と今後について考えます。
*伏木校下自治会連絡協議会 坂廣志会長
「公費解体でこういう空き地になった、転居された方がおられる。伏木の街はもう空き地だらけ。いまは」
能登半島地震で液状化の被害に見舞われた高岡市の伏木地区。発生から1年8か月が経った今も、下水などの復旧工事が続く一方で、傾いた住宅など建物の公費解体はおよそ180棟に上り、街には、空き地が目立つようになっています。
震災前、およそ500世帯が暮らしていた伏木地区から少なくとも120世帯が離れたといいます。
この先、離れた住民が戻ってこられるまで、また、残った住民も安心して暮らせるようになるまで復興が進むのか…。
不安を抱える一方で、自治会長の坂廣志さんは市と住民の液状化対策に関する協議も停滞したままと打ち明けます。
*伏木校下自治会連絡協議会 坂廣志会長
「住民合意を取り付けるには時間がかかる。市が言っている地下水位低下工法に対して批判的な違う方法は無いかという話もある。その辺を含めて市と住民と協議をしながら進めていくところがあると思う」
こうした中、先月27日に開かれた知事と市町村長との会議。
新田知事は、液状化対策の維持管理にかかる設備更新費を県が被害のあった5つの市とそれぞれ折半で負担することを表明しました。
*新田知事
「液状化地区から転居された方もいる。1日も早く話をまとめて対策を実行に移す必要がある。住民は自己負担が不安。少しでも軽減、払拭するべく支援策を打ち出した」
*高岡市 出町譲市長
「率直に言ってとてもありがたい。(6月の市長)選挙で住民負担ゼロと言い続けたが、被災住民にとって、励みになる。復興に向けて光を与えていただいた」
スタジオには福島記者です。
県の支援策について6月の高岡市長選で液状化対策の住民負担ゼロを公約に掲げていた出町市長も歓迎していましたね。
はい、後ほど詳しく説明しますが今回の県の費用負担は金利のある今の経済情勢をうまく捉えて基金の運用益で賄うというもので、県内の被害の出ていない市町村からも理解が得やすくまさに画期的なものだと思います。
その県も支援する液状化対策、簡単にまとめますと、まず、液状化は震度が概ね5以上の揺れで発生すると言われてまして、能登半島地震で液状化が発生した地域は、対策をしない限りまた5以上の地震があれば液状化が起きてしまいます。
そのため、傾いてしまった家や建物の復旧とは別に、将来への備えとして液状化の被害を軽減する対策が必要というわけです。
対策の方法は2つ、あります。
1つは自宅などの基礎工事の際に杭を打ち込んだり、床下全体にコンクリートを敷き詰めたり、「個人」で地盤を改良する方法ですが、被災していない個人宅には補助金もありませんのでなかなか難しいのが実情です。
そこで、自治体が宅地と道路などを一体的に、面として、液状化対策を行う公共的な方法があります。
今回、住民負担をどうすると言ってるのは、この方法についてです。
そして、その公共的な対策として高岡市が選択したのが「地下水位低下工法」と呼ばれているもので、工事を行うエリアを区切ってその中の地盤に含まれる地下水を人工的に抜くことで地盤を強固にする工法です。
この工事を行うには、当然、建設費がかかりますし、ポンプで地下水を抜き続けなければなりませんので、設備の維持管理費もかかります。
高岡市の概算によりますと伏木地区で工事をした際の建設費は83億円です。
ただ、これは国と市の折半でさらに、市の負担分の95%が国の交付税措置で賄われますので、高岡市の実質的な負担は全体の2.5%でおよそ2億円です。
一方、維持管理費については毎年、1800万円ずつかかります。
そして、維持管理費は国の補助がないため、市が建設費に加えて負担するか、それとも伏木地区の住民が負担しなければならないかという議論になっているんです。
今回、県が市との折半で肩代わりを提案したのはこの維持管理費についてなんですね。
そうです、こちらは、県が提案した維持管理費の負担割合です。
概ね10年ごとに交換が必要となる排水ポンプの設備更新費、全体の7割から8割を占めるこの部分を県が市と半分ずつ負担するというもので、電気代などは市と住民のどちらが負担するか判断が必要ですが、市にとっては負担が大幅に軽減されることになります。
そのランニングコストも市が負担するとなると住民負担ゼロが達成されるというわけですね。
はい、その住民負担ゼロ、やはり、大きな鍵を握っていると思います。
こちらをご覧ください。
高岡市が伏木地区に続いて開いた吉久地区の意見交換会です。
住民からこんな声があがりました。
*住民
「地元負担は今まで通り、かけない方向でいくという力強い言葉をいただけたら」
*高岡市 出町譲市長
「維持管理費。これの話。これはこれだから、ゼロね」
これはこれだから、住民が負担するお金はゼロだから、改めて公約に掲げた住民負担ゼロを実現すると強調した出町市長ですが今回、県がその後押しとなる維持管理費の負担を買って出たことで、被害地域全体で液状化対策を進めるために必要な「住民合意」に向け、議論が進むことを期待したいと思います。