背後から突然ビンタを食らわせたり、就寝中ものを投げつけられたり。
過激な配信を通じて生計を立てていたフランス人が先日、ライブ配信中に死亡し大きな騒動に。
その背景に指摘されるのは、ネット上での過剰な“投げ銭”がもたらす影響。
成蹊大学・高橋暁子客員教授:
“Kick”での配信が問題であると。圧倒的な収益率の高さになるので、(日本)国内でも少なからず事件が報告されています。
ライブ配信の在り方を巡り、フランス国内外を揺るがす事態となっています。
かつて自身のYouTubeで「俺は普通の生活をして、誰にもショックを与えたくないんだ」と語っていたのは、フランス人配信者のラファエル・グラベンさん。
しかし、そんな言葉とは裏腹に、グラベンさんは他の配信仲間と共同で行う過激なライブ配信を通じ、多額の収入を得ていました。
その配信の中身とは、例えば2人がかりで背後から羽交い締めにあったり、他にもスタンガンのようなものを腕に押し付けられるなど、暴力的な内容を含むものでした。
こうしたライブ配信が12日間、300時間近くも連続で続いていたさなかの8月18日、突如、配信が打ち切りに。
その理由は、グラベンさんが急死したためでした。
異変を察知したのはライブ配信を見ていた視聴者で、グラベンさんと一緒に寝ていた他の出演者に知らせたのだといいます。
配信が行われていたプラットフォームではグラベンさんのページは削除され、現在は見ることができなくなっています。
一体なぜ、このような痛ましい死亡事案が起きてしまったのか。
その背景として指摘されているのが今回、グラベンさんらがライブ配信を行っていた配信サービス「KICK」の存在です。
フランスの配信者・VickyLiveさん:
KICKには別の配信サービスから追放(バン)された一部の配信者が逃げ道として移ってきているそうよ。
フランスの配信者・Jokaa45さん:
KICKは誰もが知っている通り、もっと規制が必要です。戦車でも送り込むくらい徹底的にね。
フランス国内の配信者がこう口をそろえるKICK。
他の配信サービスに比べ取り扱う内容の規制が緩く、配信者にとってはさらに投げ銭の取り分が多いことで知られているといいます。
投げ銭とは、ライブ配信中に視聴者が指定した金額をネットを通じ、リアルタイムで配信者側に贈るもの。
グラベンさんらは、今回の配信で600万円以上を集めていたとみられます。
専門家は「例えばYouTubeでライブ配信すると結局6割くらいが手元に残りますが、KICKに限っては95%手元に届くんですね。目立ったら、インプレッションが稼げたら収益が増える」と説明しました。
高橋教授によると2025年、札幌の雪まつり会場で雪玉を投げつける迷惑ライブ配信を行っていた人物もKICKでの配信だったということで、実は日本にも影響が及び始めています。
今回の件について、パリ市民からは「この配信を見る時点で視聴者にも責任があります。そのコンテンツを支持しているからです」という意見も聞かれました。
今回の一件を受け、フランスのデジタル大臣は規制手段をさらに強化しなければならないとして、「KICK」に対し訴訟を起こすと表明。
また、フランスの捜査当局も過去にグラベンさんの配信に関わった人物らを傷害の疑いで捜査。
さらには、KICKについても違法なコンテンツを提供した疑いなどについて捜査に着手しています。
KICK側も当局に協力する旨のコメントをするなど、ライブ配信で起きた死亡事件はこの先も大きな展開を見せそうです。